温泉迷宮から脱出せよ！｜リアクション

温泉迷宮から脱出せよ！

●湯煙の向こうでは

　だがこのワイン風呂の煙のあっちでは。
「はっ……あぁっ、そこ……」
「ふふ、冬華はいつも、ここがコリコリになっちゃうなあ」
「そんなこと、言われてもッ……あぅっ」
　アルコールに意識をほぐされた月が、愛する冬華の身体をほぐすべく、マッサージをしていた。
「そんなに声を出したら、イロイロ誤解されるよ？」
　くすくすと笑いながら、冬華に口づける。
　その唇が、いつもよりも温かい、いや、熱いほどと感じるのは、このワイン風呂で血行が促進されているためだろうか。
（それとも……興奮しているのか）
　とろんと蕩けた冬華の瞳に、月の鼓動が早くなる。
（可愛いな～、ここを脱出したらベッドで可愛がってあげないと……ああ、逆に可愛がられちゃうかも）

「あんっ、そんなに強くしたらっ……」
　冬華はいよいよ、月の腕をぎゅっとつかんだ。
「もうっ。月さん。こういうのは家に帰ってからですよ……」
　ただ、そう制止する声は、いつもよりも掠れて甘い。
　それでも月が手を止めたのは『家に帰ってから』という言葉に期待を込めたのと、誰かの声が聞こえたからだった。

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