天を狂わす龍の声｜リアクション

天を狂わす龍の声

紫苑は水妖仙と対峙していた。対話を試みているわけだが。
「じゃあ、質問ですけど、普段は何を食べてるんですか？」
　水妖仙は首を傾げた後、自分を指で指した。
「え、共食いですか？」
　あろうことか、水妖仙がこくこくと頷く。
「ちょっと予想と違いますけど、なるほど……。ところで、近くで見ると可愛らしいですね？」
　すると、水妖仙は動きを止めて、紫苑の前に座り込んだ。仕草的に背中へ乗れと言っているようだ。
「もしかして、近くまで連れていってくれるんですか？」
　そんなわけで、肩車をされつつ、竜巻へと向かうことにした。案内してくれるつもりらしい。水妖仙と共に移動し始めた紫苑は辺りを見回した。
　天候が変わり、雪が降り積もり始めたのだ。
「……かき氷のシロップかけたら美味しそう……」
　なんとなく、そう思った。

　雪が降り始めた。士のろっこんで一時的に天気が回復したものの、すぐに雲がわき出てきてしまった。どうやら雪雲らしい。
　莉鳥はそれを気にせず、指先に集中する。目を閉じてはいるが、この寒さで研ぎ澄まされた感覚は最高潮だ。
「そこっ！」
　目と鼻の先に迫っていた龍魚へろっこん、スタンハンドで電撃を食らわせる。背後から襲ってきたそれらを横に避け、体を捻りながらもう一発、打ち込んだ。
　体勢を低くし、二発連続で。頭上に迫っていた龍魚は相手にせず走りだし、指だけを後ろに向けて、一発。
　ステップを踏みながら、着実に龍魚を撃ち落としていく。
「はぁはぁはぁ……数は……減ってきてるわね。龍の方は……頼むわよ？」
　誰に言うでもなく、呟く。
　雪が舞う通りに電撃が響く。

　渦に突入すると、そびえ立つ塔のような巨大な龍がそこにいた。
「あれか」
　物凄い風に踏ん張りながら、三人がそれを見上げた瞬間、龍の瞳がすうっと細まった。周囲に静電気が発生する。
　嫌な予感に、修は傘を取り出した。
「な、何か来ますよ」
　月がそう言った瞬間、龍の周囲に雲が出現した。それと同時、龍全体から落雷が発生する。
「まずい！」
　修は合羽から傘を取り出し、龍の方へと思いっきり投げる。避雷針の代わりとなり、雷は周囲に散って消えたのだった。
　すかさず夏朝が複数のシールを発射するが、風のせいか届かずに飛ばされてしまう。
　説得も一つの手だろうか。
「おい！　俺の声が聞こえるか？」
　修が呼びかけると、龍は動きを止めた。どうやら声は聞こえているらしい。
　と、その瞬間、風が弱まり、竜巻が急速に縮んで行った。

　竜巻の前へとやって来た二人。士は素早くろっこんを発動させるため、指を三回鳴らした。最初に風が止み、竜巻が消滅して行く。
　驚いて振り返ったのは修、夏朝、月の三人である。
「まだまだ！」
　さらに指を鳴らすと、大粒の雹が降り始めた。
「アンタら、気を付けろよ！」
　雹が降る範囲は龍の周辺だが、流れ弾が当たってもおかしくない。三人は頷いて傘を広げたようだ。
と、看板を持った豪が
「でやああっ！」
　飛んできた一際大きな雹を跳ね返した。
「よし！」
　雹は龍の身体に打ち付けられ、少なからずダメージを与えているようだ。
　次に動いたのは月だった。
「押さえます！」
　鋼糸で隙だらけの龍の体を拘束する。さらに夏朝がシールを発射し、重さで地面に這いつくばらせる。
「やったか？」
　龍は身動きが出来ず戸惑っているようだ。
「龍よ、ここにいられては俺達が困るんだ。どうか、元の場所へ帰ってくれないか」
　修がそう呼び掛け、士も頷いた。
「同じ力を持ってても、俺はここに居場所がある。君も居場所へ帰れよ」
　……龍はこの場の全員を見回した。

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