天を狂わす龍の声｜リアクション

天を狂わす龍の声

　竜巻へと向かっていた紫苑は近くで何かが崩れ落ちる音を聞いた。
「え？」
　一本奥の通りへ出てみると、民家の塀が道に沿って崩れてしまっていた。下敷きになっているのは竜巻の中から出てきたモンスター達。そして、向こうから走ってくるのは、修、夏朝、月の三人である。
「もしかして私と同じように……？」
　彼らは竜巻へ向けて一直線である。テオの話を聞いたのだろう。
　紫苑は驚きつつも、声をかけることにした。
「こんにちは」
　彼らが気づいて、足を止める。
「こんなところでどうしたんだ？」
　修はそう問うてから、紫苑の状況に気づいたらしい。
「そうか、同じか」
「一人なの？」
　夏朝に問われ、紫苑は頷いて、
「凄いことが起こってるなーと驚いてたところなんです」
「な、なんだか脱力しますね」
　月が苦笑を浮かべた時、四人の近くに一際大きな水妖仙が現れた。
「！　気配を感じなかったな」
「ここは僕が」
　夏朝が前へ出るが、
「まぁ、待ってください」
　紫苑はそう言って、さらに夏朝の前に出た。
「こんにちは」
　笑いかけると、水妖仙の動きが止まる。
「色々と聞いても良いですか？　興味があるんですよね」
　すると、言葉が通じたかのようにこくこくと首を縦に振った。
「ふふ。皆さん、ここは私に任せて、進んでください。検討を祈ります」
「えーと、どうする八神君？」
「なら頼もう」
「無駄な戦闘が避けられるなら、ありがたいですね」
　紫苑はそこで三人と分かれた。
　
　
　豪、士と合流した莉鳥は暴風雨となった道をひたすら進んでいた。
　制服が体に張りつき、水を吸って絡みつく。体温も低下し始めていた。それでも豪の看板のおかげで大分楽だが。
　やがて開けた通りに出た。
「ここならどうだ！？」
　豪の叫びに莉鳥は彼の後ろから飛び出て、精神を集中させる。追いかけてきた龍魚をギリギリまで引き付けて、電撃を一発。数匹がボタボタと地面に落ちる。
「ここは任せて。竜巻へ行くんでしょ？　後は頼んだわ」
「アンタなら大丈夫そうだな！」
　そう言った士は指を三回パチンパチンと鳴らした。
　途端に雨が止み、太陽が顔を出した。士がろっこんを発動させたらしい。
「！」
「長くは持たないが、風邪引くなよ！」
「ええ。ありがとう」
　低下した体温が少しだけ戻った気がした。

　修、夏朝、月は竜巻を前にして足を止めた。近くの建物に隠れ、轟音を立てて吹き荒れるそれの様子を伺う。
　飛ばされないで済んでいるのは、夏朝のシールのおかげだ。
「常闇、竜巻の中にあるものに鋼糸を巻き付けられるか？」
「！　出来る、と思います」
「恵御納、常闇の鋼糸にシールを巻いてくれ」
「うん！」
　修の指示に従って、月は夏朝の猫シールが巻かれたグローブで鋼糸を竜巻の中へと放った。糸自体を重くしているのでなんなく、竜巻の中へと吸い込まれていく。そして、月に夏朝がしがみついた。
「さぁ、八神さんも」
「ああ、悪いな」
　そう断って、修も夏朝と同じようにする。
「お願いします、恵御納さん」
　夏朝は頷いて、重くしていた糸を一気に元の軽さへと戻す。その瞬間、三人の体は竜巻の中へと吸い込まれて行った。

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