推理ゲーム『ねこじま人狼』5th｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』5th

●島民たちの推理

　彰尋は無意識に、机の上に置いた右手の中指と人差し指で鍵盤を叩く様にリズムを取っていた。
「ぐるぐるするよ……誰を信じれば良いのか、素直に信じて良いのか」
『占い師が３人……狂人相当がいないから島民サイドの騙りってことはないだろうし、人狼も妖狐もこの中にいる、かな。３人のうちだれが本物かってことになると思うけど……』
　海も、自分の考えをスケッチブックに綴る。
　みんなについていくために急いで書いたせいか、字はすこし歪んでいる。

「まーじかー……」

　流は目を閉じ、顎を摩った。
　ややあって、目を開け。
「まあ、逆に見れば他は全員信頼できるってことだよな？」
　その発言に、春彦も強く頷く。

「俺も島民サイドの名乗りはみんな真だと思ってる」

　それから占い師の三人を順に見て、こめかみに指を当て考え考え言う。
「志波先輩は卯木達が言ってたみてぇに占い師を殺して残りの一枠かけて勝負に出たんじゃねぇかって思ったり。ただそれも結構な博打だしメリットがねぇってのがあって、ほぼ同時占いだったから様子見てから黒結果出したってのも思い付いた……ケド、志波先輩が真だとしたらそれこそ人外の狙いかもって、ぐるぐるしてる」

『改めて3人が発言した順番を確認したいな』と海が書いた。
『どのタイミングで名乗り出たかっていうのは結構重要そうだし』

　
「最初は卯木、次に来島、最後が志波先輩だったね」
　とサキリが言った。確かにその順番だ。
「狼について強いて言うなら卯木の方が早くCOして白出ししている分やや来島の方が怪しいかな。さっきから皆が言っているように、狂人がいない環境での速攻白出しはリスクがあるのでやりにくいからね」
　すると、ガタっとアカリが立ち上がる。
「ちょっと待った。卯木より俺の方が遅いっていう点については、断固抗議、するからな」
「というと？」
　サキリが問い返す。
「発言のタイミングを、よく思い出してほしいんだ。俺の発言、卯木の発言を聞いてからってタイミングじゃない……だろ？」
　たしかに、ふたりの発言のタイミングは、ほぼ同時と言っていいほどの差しかない。
　どちらかがどちらかの宣言を確認してから自分も言ったというタイミングではない。
　どちらの発言にも、朝イチ取ったるでー！　という気迫が感じられる。
　もしも、占い師３人の内訳が皆のいうように真１人外２であるならば……どちらかが、あるいは両方が、相当のギャンブラーだということになる。

　彰尋は衛に会釈で、ごめんね、と意思表示してからこういった。
「今のところ素直に考えたら卯木君が怪しくなっちゃうのは仕方が無いかなって。占いが２人出てくるだろうなって予想はしていたんだけどまさか３人かぁ……」
「ええー、彰尋くんそりゃねーよ！」
「いや、完全に疑ってるわけじゃなくて、占いの誰を信じるかはまだ決められない、ってところ。他の役職の人は信じたいところ、かな？　３人の中に真狐狼がいると思いたいよ」

　うん、と海も頷く。
『私もまだ、来島くん、卯木くん、志波先輩の誰がどの役職なのかわからないよ』

　首の後ろに手を当てて考え込んでいた春彦は、彰尋とは違う印象を持ったらしい。
「俺は卯木を真めで見てたんだケド、すぐ俺も騙されっからなぁ……」

　マカロンを口に入れて糖分を補給した壱都は、静かにこうこぼした。
「いっそ三人で噛み合い、占いあってくれれば次の日の状況も動きそうなものですが……」