夢で叶える夢｜リアクション

夢で叶える夢

「あれ？」

　気付けば新井晶は夏のビーチにいた。そう、本当に気付けばと言った感じで一体どのようにしてここに来たのか全く覚えがないのだ。
　晶が身に着けているのは白の女子用スク水。これに関してはいつも着ているので良いのだが、問題は身体そのものにある。
　本来の晶は所謂男の娘であり、その為身体自体は男なのだ。だが、今の彼は身体付きが女性のそれであり胸も存在していた。しかもKカップ65アンダーというそびえ立つ巨塔である。釣り鐘型の形をしたそれは最早凶器とも言える。

　自らの身体に違和感を感じつつもしかし、何故違和感を感じるのか理解できない晶。
　うーんと晶が悩んでいると、後ろからポンと頭に手が乗せられた。

「急に立ち止まってどうしたんだ、晶」
「えっ？」

　晶が振り返ればそこには男性用の水着を履いた遠藤健がいた。
　一瞬何でここにいるのかと晶は思ったが、直ぐに恋人である事が頭の中に浮かんできた。

「ううん、何でもないですよ、健君」
「そうか？　ていうか……晶、もう少し違う水着はなかったのか？」

　改めて晶の前に回った健が晶の水着姿を見てからそんな事を言う。

「え？　何か問題がありますか？」
「問題があるというか、問題しかないというか……」

　こてんと可愛らしく首を傾げる晶に、問題しかないと告げる健。
　スク水の形状的に幾ら胸が大きくとも零れそうになる、という事はない。ただ、この白のスク水は何故か透けているのだ。

　服の上からですらKカップの胸は凶器だと言うのに、透けスク水ともなればそれはただの殺戮兵器と化す。
　一体、何故このような水着を着ているのか。それはある夢で着たからなのだが、そんな事は今の晶は知る由もなかった。

　しかし、幾ら鈍感と言えども自らが着ている水着が透けているという事くらいには気付いても良さそうなものなのだが、晶は気付く事はない。
　その為、何故健が顔を少し赤くしているのかも気付く事はない。
　このビーチには何故か晶と健しかいない。それ故に恋人である健にしか見られないのならば何があっても特に問題はないという意識もあるのかもしれない。

「ふふっ、えいっ！」
「ぶっ！」

　殺戮兵器と化した透けスク水の巨胸を見ている健に向けて、突然晶が雪玉を投げる。
　ぼふっと健の顔面にぶつかる雪玉。夏のビートだと言うのに何故雪玉なのだろうか？
　ぶつけた晶もいつの間にか持っていただけなのだが、細かい事はあまり気にしていないようだ。

「何で雪玉っ！？　む、何か砂を手で丸めると雪玉になる。良く解らんけど、良くもやったな！」
「きゃっ！」

　健に雪玉を当ててきゃっきゃっとハイテンションで喜んでいる晶に対して、雪玉の返礼を行う健。
　返礼は見事晶に当たり、何故かその当った箇所のスク水が溶けるように消える。

「水着が消えたっ！？　って、その部分を何か謎の光が覆ってるし」
「良くもやりましたねー？」

　水着が消え、消えた部分に存在する謎の光に驚く間もなく再び雪玉をぶつけられる健。
　どうやら水着に雪玉が当ると消えるのは健も同じらしく、互いにテンションが上がった2人は水着全部が謎の光に置き換わるというレベルまで夏の雪合戦を繰り広げるのであった。

「あー、楽しかったですねー」
「何か海に来たのに凄い謎な事をしてたけどな……」

　海の家で暖かい物を食べながら先程の雪合戦の事を話す2人。
　雪合戦が終わると同時に水着も復活したのだが、未だにあの雪合戦が何なのか良く解らない様子だ。
　そして、そこで2人の意識は唐突に途切れる。

「うーん……。何か変な夢を見たと思いましたら……夏風邪引いてました……」

　ベッドの中でうーんとうなされている晶。どうやら夏風邪が原因であのような夢を見てしまったようだ。
　一方、健はと言えば夏風邪は引いていないものの、Kの殺戮兵器が、俺はノーマルだとうなされていましたとさ。

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