妄想おばさんがあらわれた！｜リアクション

妄想おばさんがあらわれた！

　シーサイドタウンなんて、いかにも涼し気な名前なのに、やっぱり夏は暑いわね。
　私は自由な格好ができるけど、高校生なんて、決まった夏服をしっかり着なくちゃいけないから大変。

　――寝子島散歩をしていたおばさんが、最初に妄想をかき立てられたのは、退廃の美少女、朝鳥さゆるだった。

　……あら、あの子。
　寝子高の制服が、ずいぶん似合わないわね。まるでフランス人形が、幼児向けお人形の服を着せられちゃったみたい。
　なんていうか、綺麗すぎるのよね。それに、若者っぽさっていうか、キャピキャピした感じがないし。退廃的？　厭世的？　っていうのかしら。

　――おばさんは足を止め、まじまじとさゆるを見つめた。

　うん、きっとあの制服は衣装ね。そうに決まってるわ。
　でも……そうだとしたら、あの子の正体は、何者？
　美女はスパイと相場が決まっているけれど、それにしては、違和感がありすぎる。
　っていうか、この平和な世の中、美女スパイなんてそのへんにいるわけはないわね。
　ふふ、テレビの見過ぎだわ。

　テレビ……そう、女優さん！　……っぽくもないわねえ。
　じゃあお水の子！　……にしては、レベルが高すぎる気がする。
　だってあの美貌よ？　それで島のお店にいるんじゃ、もったいないなさすぎだわ。
　どうせなら、もっと都会の、一見さんお断り！　みたいな、高級なところで働かないと。

　……あの美しさと、気だるげな感じと、クールさが評価されるとしたら……。
　あ、わかった！　きっと星ヶ丘あたりの大富豪の、若い愛人ね。
　しかもいつもは部屋から出ることを許されない、籠の鳥。
　あの尋常じゃないレベルの美しさと、この寝子島ののほほんとした空気の似合わなさは、それしかないわ。

　そんな彼女が、制服を着て外に出てきているのは、羞恥プレイの真っ最中だからよ。
　変態なご主人様に、「高校の制服を着て、街を歩け」なんて言われたんでしょう。
　きっとどこかで、ご主人様が見張っているはずだわ。
　それにほら、彼女、なんとなくMっぽいし。

　この後、ご主人のもとへ帰ったら……。
　いくら彼女がMでも、あの綺麗な手足に、傷や跡をつけるのは、ご主人様も耐え難いでしょうから、あの制服を着たまま……。

　ああ、この先は言えないわ！
　でもおそらく、あの子はベッドの白いシーツの上に仰向けになるわね。
　そしてあの黒髪を乱して、制服のスカートの下で、白い脚を広げて――。
　ああ！　本当に言えないわ！　これ以上は無理よ！

　もう、なんて罪作りな子なんでしょう。
　いいえ、あの子が罪を作ったのではなく、変態主人の毒牙にかかった、とでも言うべきかしら。
　どちらにせよ、嗜虐的な妄想をかきたてる子ね。素晴らしいわ。

このページにイラストを設定する