妄想おばさんがあらわれた！｜リアクション

妄想おばさんがあらわれた！

「こんにちは～。僕は絵を描くのが好きなんですけど、このへんに絵になる美少年なんていないですかね？」

　――寝子島散歩をしていたおばさんは、響タルトに声をかけられて、足を止めた。

「お姉さん、かなり人間観察をされてますよね？　もしかして僕と同じで妄想が好きなんじゃないですか？」
「えっそんな見た目でわかっちゃう？」
　ちょっと動揺したけれど、仲間とわかれば話も弾むというもの。

「そうなのよ！　妄想って何でも自由になるしお金もかからないしテンションも上がるし、最高の趣味だと思うの！」
「ですよね～☆　お姉さんの妄想の話聞きたいな～。僕も色々語りたいです♪」

　聞きたい？　と言うかお姉さん？　この妄想おばさんを？
　なんていい子なの！
　私は思わず、女子高生の手をぎゅっと握りしめた。

　……と。
「たとえば向こうを歩いている美少女」
　彼女は、清純無垢が服を着ているような、女の子に目を向けた。

「実は今流行の男の娘じゃないかな、とか。風が吹いてスカートがめくれたら、うっかり見えてはいけないものが見えちゃうとか、考えますよねｗ」

　風が吹いてスカートが？
　見えてはいけないものって、男の子についている……！
　やだ、なんてギャップなの。最高だわ、おばさんの心にクリティカルヒットよ！
　しかも彼女は、こう続けたの。
「それを目撃した不良少年に弱みを握られて、怪しい関係に……」

　ああ、美味しい、美味しすぎる！
「でも私だったら、セレブな美女に見られるっていう展開も捨てがたいわね。彼女は美少年に、好みの服やエッチな下着を買い与えて、もちろん女性ものよ。それを着せて、チラリズムを楽しむのよ」
　言えば彼女は、きらきらと目を輝かせた。
「目撃者はあどけなさを残したショタで、それをきっかけに怪しい性癖に目覚めてしまうとか。普通の女の子には萌えられなくなって名も知らないあの日の男の娘を探し続ける……っていうのも、ありですよね！」

　素敵！
　たった一度の出会いが、相手の人生を狂わせてしまうなんて……。
　運命の出会いよ！

「僕だとついＢＬに走っちゃうなｗ」
　愛らしくはにかむ彼女の肩に、私はそっと手をのせる。
「いいじゃない！　想像の翼を羽ばたかせて、自分が萌えることを追求できるのが、妄想のいいところよ！　私だってつい、年上のお姉さんにあれこれされるショタとか考えちゃうわ」
　彼女はふふふ、と唇をほころばせた。
「そっか、お姉さんそういうのが好きなんだ。でもさ、見てるのはこっちだけじゃない。深遠もまたこちらを覗き込んで僕らのことを妄想してるかもね？　それもまたよしだよねｗ」

「ああ、それもよしよ！　なんでもありよ！　もう、この島に同志がいるとわかって嬉しいわ！」
　私は女子高生を、思い切り抱きしめた。

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