迷子はこちら、親御はどちら？｜リアクション

迷子はこちら、親御はどちら？

「ミオ！」
　ネコキュアのショーが終わった頃合いだろうか。
　少女の母にしてはやや年配の女性が背後から声をかけてきた。
「おばーちゃんだぁ！」
　降りたがるにまかせて地面におろせば、少女は祖母の元へと駆け寄っていく。

「――いるはずのない父親を、探して回ってたのでしょう」
　ステージ近くの海の家近く。
　少女に飲み物を買ってくるよう伝えると、祖母は彰尋へ謝りがてら、事情を説明してくれた。

　先日母親が若くして亡くなったという。
　その母が、父と出会ったのがこの海岸なのだと。
　出会った時の父親の格好が、ちょうど今日の彰尋のようだったと。
　その話を、きっと覚えていたのだろう、と。

「本当に、ご迷惑を」
　そんなことはない、と彰尋は首を横に振った。
「よければ、もう少し遊んであげててもいいですか？」
　ぜひ、と頷く女性に会釈を返し、海の家から帰ってくるミオに、小さく手を振って、彰尋は思う。

　母を亡くしたばかりの少女にとって、少しは楽しい夏の思い出ができたら、いいな――と。