ニャンとめでたいワンダフル！｜リアクション

ニャンとめでたいワンダフル！

【ポスターの反応それぞれ】

「なあなあ、タイラ！　またお祭りがあるんだって！」
　ちょうど出会い頭に、いつもの屈託のないの明るい笑みを浮かべて、ポスターを直感十数秒で解読した源竜世は、その成果をタイラ・トラントゥールへと告げました。

「祭りだと？」
　今は丁度夏のシーズンです。お祭り大好きな島民性もあるのか、寝子島では各所でお祭りが行われています。その為、祭りがある事自体は何も不思議ではありませんが、
「……」
　むしろ、祭りの都度こうして誘いに来る竜世に、タイラは『自分を連れて、寝子島全ての祭りを踏破でもするつもりなのか』と、最近になって思い始めた昨今でもありました。
　……ですが、不思議と。それも、理由がないならむげに断る気にもなれなくて。
　そんな、最近のタイラの胸中は、むずがゆさにも似た頓に複雑なものでした。
　しかし、

「場所は、エノコロ岬の岩にさわればいいって書いてあった！」
「は！？」

　目を輝かせたままそう告げた竜世に、タイラのこの『何を言っているんだ、この鳥頭は』というニュアンスは、きっと誰にも責められたものではなかったでしょう。
「おい、竜世！
　お前また怪しい事に足を突っ込むつもりじゃないだろうな？」
「ホントだって！　あちこちに貼ってあったポスターに書いてあったんだって！」
　それでも、タイラも寝子島に来てからそれなりの時間が経ちました。その内容を、ただの『誰かの理由のないいたずら』と片付けるには、今までの経験がそうではないと告げているのです。
『何か悪い事が起こったら』……整った眉を鋭く寄せたタイラに、必死になって竜世が訴えます。
「がんばって解読したし、間違いないって！　よくわかんねーけど、いぬとねこの祭りがどーのって──まあ、さわってみりゃわかるじゃん！
　タイラ！　一緒に確認しにいこうぜ！　レッツゴー！」
「あ、こら！　待てっ！！」
　瞳の輝きを曇らせないまま、竜世はエノコロ岬の方向へ一直線に走り始めました。
　こうなったら竜世は止められません。タイラは慌てて、後を追い掛けました。

「到着っ──と。あれ……こんな岩あったっけ？」
　ちょうどこの季節のエノコロ岬は、夏の爽やかな風が吹いていて、とても心地良く感じられます。
　しかし今そこには、どう見ても見覚えのない、まるで黒曜石のような、大人の等身大規模の大岩がそびえていました。

「わ、本当にあった！　これに触ればいいんだよな？
　──え」

　好奇心で溢れ返る竜世の手が、躊躇いなく大岩に触れた瞬間──すぽん、と大岩がその手を飲み込みました。
　抵抗もなく、支えにもならなかった大岩に体勢を崩して、竜世がそのまま落ちるように飲み込まれていきます。
「竜世──！！」
　駆け寄ったタイラが、残された竜世の腕に手を伸ばして掴み──
　そのまま二人とも、一緒に大岩の中へと落ちるように潜り込んでいきました。

「わぁ……っ」
　壁に貼られていたポスターの一枚。
　それを目にした恵御納夏朝が、少しの文字読解に要したタイムラグの後に、内容を把握して表情を輝かせました。
「いぬねこ合同のお祭り……！」
　楽しそうなお祭りの様子が描かれたポスター。
　夏朝は、きっとそこに様々な思いが詰め込まれているであろうポスターを見ながら考えました。
　お祭り自体も、今から物凄く楽しみです。
　──でも、出来れば今回は、是非とも自分からも、このお祭りの記念になるようなお祝いをしたいと。
　夏朝はそう思い、さっそく自分に出来ることを考え始めたのです。

　歩く道すがら、このお祭りの存在を既に知っているかも知れない友人、八神修に携帯で連絡を取ります。
　それから、駆け足でお店を巡って数十分。夏朝は、先程修と約束したエノコロ岬の黒い大岩の前に到着しました。

「王さまとしょうぐんさまへのお土産に、ねこおやつといぬおやつ……缶詰は少しコツがいるけれども爪で開けられるかな。
　それから、スケブと画材と──」
　修が来る前に、夏朝は買い漏らしはないかと、品物を入れた布製の袋を広げながら確認します。
「後は──ねこシールといぬシールも！」
　ねこシールはろっこん発動にはもちろん、いぬシールと合わせて贈り物にも大変喜ばれる一品です。これらを外すことは出来ません。

「すまない、待たせたか？」
　すると、あちらも手に軽く袋を掛けて、修が大岩のある高台の上に現れました。
「ううん、こっちが少し早く来すぎたかも」
　ですが、これで準備は万端です。
「よし。それじゃあ、行くか」

　二人にとっては、幾度も通って慣れた道。二人は、躊躇いなく黒い大岩の中を潜っていきました。

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