CDショップ『Pioggia d'aprile』｜リアクション

CDショップ『Pioggia d'aprile』

●優雅な時間

「いらっしゃいませ～♪」

　響タルトは『Pioggia d'aprile』の店内で臨時のアルバイトとして働いていた。店内にはものすごい数のCDが所狭しと並んでいる。カウンター業務やCDの整理、掃除などをしていると、常連と思われる客に声を掛けられた。

「見ない顔だね。新人さん？」
「あ、僕は臨時バイトなんです。このお店の素敵な雰囲気が気に入ってて。満喫できるチャンスだなって」
「その気持ちわかるよ」

　そんな風に雑談を挟みながらアルバイトをこなす。するとまた別の客が来店してきた。

「いらっしゃいませ～！」

　タルトがそのほうを見ると三宅ゆりの姿があった。ゆりはタルトに近づくと、『ビビッと来る曲』を探しているという旨を伝える。ざっくりとした要望だが、タルトはパソコンで店内の楽曲を探しつつ、記憶にあるデータベースから色々引っ張り出す。

「それなら、この曲なんてどうかな？　視聴してみて～」

　タルトはとある一曲をゆりに勧めた。彼女は早速その曲を聴いてみる。タルトが勧めたのは趣味のBL系アニメの曲。

（ビビッとくるってことはインパクトが大事だもんね～、アニメのOPだとそこはバッチリなんだよね。難しく考えるよりまずは聴いてみることだよー）

　聞き終えたゆりは確かにビビッと来る感触があったようだ。ただBLがどういうものなのか彼女が知っているかは分からない。こんな風に仕事をこなしているうちに時間は１８時を迎えた。
　『Pioggia d'aprile』は夜になると地下の演奏スペースが開放される。タルトは自分の仕事を片付けてから地下へと降りた。

（僕は歌がうまくないから、上手な人に憧れるよ……素敵な雰囲気を壊さないようにしながら、お客さんになごんでもらえるといいな）

　ステージでは様々なジャンルの歌や演奏が行われている。ソロでの演奏やグループでの合奏など、スタイルも様々。そんななか、樋口弥生先生がギターを構えてステージへ。弥生先生は去年、タルトの教室の担任だった。

（いつもは着物で素敵だけど、ライブのときは相変わらずかっこいいよね～♪）

「弥生先生、頑張って～☆」

　声援が届いたのか。はたまた偶然か。その声に答えるように先生のギターは激しく響きだした。