CDショップ『Pioggia d'aprile』｜リアクション

CDショップ『Pioggia d'aprile』

●未知の世界

　月影欠るはシーサイドタウンをのんびり散歩していた。しかし夏の暑さが辛くなってきたので、それを凌げる場所を探し始める。できるだけ日陰を進んでいると、聞いたことの無い音楽が聞こえてきた。
　その音を辿るように歩き続けてCDショップ『Pioggia d'aprile』の前まで来た。涼むのにもちょうどいいと思って、ふらっと立ち寄った。欠るは入店すると、まず、ずらっと並んだCDに驚いた。

「えんばんがいっぱいある」

　店内には数え切れないほどのCDが置かれていた。欠るは涼むために来店したのも忘れて、陳列棚をうろうろと見て回る。邦楽、洋楽に関わらず、様々なジャンルの楽曲が並んでいる。そこには彼の初めて出会う世界が広がっていた。
　家で聞く音楽といえば、テレビやラジオから流れてくるポップスやクラシックがほとんど。そんな彼にとって、知らないジャンルの音楽がたくさんあることは十分すぎる興味を惹いた。

「音楽って、いろんな種類があるんだね」

　店のなかを歩き続け、気になるCDを何枚か見つけた。しかし元々買い物に来たわけではないので、手元には数百円程度しかなかった。

「そういえば……CDって、お札が何枚いるのかなあ？」

　自分の貯金を集めても、CDは買えないかもしれない。それなら親に頼んでみようか。何枚くらいまでなら大丈夫かな。
　そんなことを考えながら探索を続けるうちに地下への入り口を見つけた。興味を惹かれて近づくと、後ろから声をかけられた。

「キミ、そこはまだ入れないよ」

　声のほうを向くと響タルトが立っていた。どうやら臨時のアルバイトをしているようだ。欠るがここについて尋ねると、タルトは夜になると地下で演奏会が行われること等を教えてくれた。生演奏を聞いたことがない彼はとても興味を惹かれた。
　ただ、昨日も一昨日も帰りが遅くなって怒られたばかり。流石に連続では駄目だと思い、しぶしぶ諦めることに。
　忘れっぽい彼だが、この店のことはしっかり記憶に刻んで帰路に着いた。

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