【終業式】負けられない！　夏休み前哨戦！！｜リアクション

【終業式】負けられない！　夏休み前哨戦！！

　掃除は終わった。
　探し物もすべて見つかった。
　そして、静かに神魂の作用は沈静化していく。見慣れた光景へと戻っていき、ほしびとや急成長していた小学生達は元の場所へ転移する。戻ってきた喧騒に、一同はほっ、と一安心。

　ところが、まだすべては終わったわけではなかった――！

（あー、あのグッツはいつのまにか消えてる……。けれど、まだここからだ！）
　男子更衣室の掃除後、がっかりしていた新井晶だったが、まだ野望は消えていなかった。見た目女の子なところを利用し女子更衣室へ堂々と入ろうとしていたのだ！
「よぉし、者ども！　突撃するぞーっ！」
　と、晶が外へ出ようとした瞬間、鈍い音を立てて弾き飛ばされた。
「ごめんなさいっ！　私、忘れ物しちゃって……？」
「おや、播磨さんじゃなーい♪」
　現れた噂の弾丸娘、播磨愛李子の登場に志波武道は困惑。それはそうだ！　男子更衣室だものね、ここ！
「ねーちゃん、ここ男子更衣室だぜ？」
　源竜世の言葉に、愛李子はぱっ、と顔を真っ赤にする。どうやら、慌てて来たからか素で間違えたらしい。
「きゃあ！　ご、ごめんなさいっ！　あなたも大丈夫？」
「う、うん」
　謝罪した愛李子は、倒れていた晶を助け起こすと彼にも謝罪し、晶を連れて女子更衣室へと向かうのだった。
（え？）
　真顔になる晶。どうやら愛李子は晶を「自分同様、間違えて男子更衣室にきてしまった女子生徒」と勘違いしたようだ。まぁ、現時点で晶は彼女のろっこんの所為で本当に女の子になっているので問題ないだろう、見た目には。
（マジで女の子になってるーっ？！　播磨さんのろっこんぱねぇ！？）
　晶が愕然としている間に、野望達成！　晶、女子更衣室へ堂々侵入成功！　だが、すでに掃除は終わり、生徒たちも外に出ていた。
（意味がない！）
　こっそり膝をつき崩れる晶。そんな姿など知らない愛李子は、更衣室の奥で慌てていた。
「困ったわ。水泳用のゴーグルを忘れてしまったのよ……。掃除のときに回収されたのかしら？　あとで職員室に行ってみましょう」
　愛李子はそう言って出ていく。晶もまたしょんぼりした様子で女子更衣室を後にするのだった……。

　これにて、すべてのミッションが達成されました。
　夏休みが、ちゃんと来ますっ！！

　また、これは時間が動いた後の話ではあるが……本条小萩が拾ったノートの持ち主は、彼女のクラスメイトの女子であった。
　小萩が「大事なものですから」と笑顔で渡したノートを、彼女はすごく顔を真っ赤にした状態で受け取り、涙目で走り去ったらしい。小萩は「泣くほどうれしかったのでしょう」と言っていたが、走り去るノートの持ち主を見た者は「ノート燃やそう、ばらされたらおわりだ」というのを聞いたそうな。

　一方保健室。
　久保田美和はすでに全快しており、落とし物も全部自然と彼女の元に集まっていた。
「なんか、みんなに迷惑かけちゃった気がするわ……」
　と少ししょんぼりする彼女を励ましているのは、恵御納夏朝。彼女は美和を心配し様子を見に来たようだ。
「大丈夫。みんな、先生の事大好きだよ。だから、がんばって色々探していたんだから」
　そっと彼女の手を取り、目をわずかに細める夏朝。美和と目を合わせると、こくり、と頷く。
「それに、夏も、秋以降も…きっと、良い事沢山やってくるから……！」
「ありがとう、夏朝ちゃん。ふふ、ちょっと元気が出たかも」
　ゆっくりと、だが、確かに普段通りの明るい笑顔になった美和。それを見、夏朝はほっ、と胸をなでおろした。

このページにイラストを設定する