授業風景～番外編・自習の場合～２｜リアクション

授業風景～番外編・自習の場合～２

○ドリル先輩との邂逅

　周囲が「自習だー！」とざわつきだしたので、水上桜は何となく落ち着かなくなりました。
　四十九院先生は担任の先生ですが、朝はいつもどおりだったのに、と首を傾げます。
　何にせよ、こういう時は「自習」と言われても勉強に手が付きにくいものです。
（先生がいないということは……いまここで作りかけのアクセサリー作っちゃってもいいかな？　いいよね？　小一時間ばかり時間潰すのに、最適だし、いいよね？　うん、いいに決まってる！）
　誰も返事はしていないのですが、桜は脳内で自己解決してしまいました。
（そうと決まれば善は急げ）
　とばかりにバッグから道具一式と作りかけのブレスレットを取り出します。
　なにしろ今回のビーズはいつもとは違うのです。
（アメジストやペリドットを組み合わせて……間に水晶のビーズを入れてバランスをとって、これで上品な感じにまとますでしょ。で、星形のチャームとかつけたらちょっとかわいくなるかな）
　そんなことを思いながら熱心にブレスレットを作っていると。
「素敵ね、それ」
　急に声をかけられ顔を上げると、金髪縦ロールの美少女が桜の手元を覗き込んでいました。
（……先輩？）
「……あ、ありがとうございます」
　どぎまぎしていると、その少女……剣崎エレナはさらに話しかけてきました。
「これ、普通のビーズとは違うわね」
「はい。この前、旧市街にある行きつけのアクセサリーショップで開店３０周年記念とかで福引をしたら、普段はなかなか手が出ない半貴石のビーズ一式詰め合わせが当たったので……」
　２万円相当の詰め合わせだったので、思い切りテンションが上がって、まずはビーズを作ろうと思ったのでした。
「それはラッキーだったわね。貴石っていうと一般にダイヤモンド・ルビー・サファイア・エメラルドね。それ以外の宝石が半貴石だったかしら？」
　目の前の美少女は、いかにも宝石が似合いそうな風格がありました。
「はい……先輩も、アクセサリーお好きですか？」
「そうね、自分で作ったことはないけど……自分のセンスで好みのアクセサリーを作るのって楽しそうね。あなたは芸術科の人？」
「いえ、普通科なんです。これは趣味だし、芸術ってほどじゃ……」
　するとエレナは興味深そうに言いました。
「あら、私と似てるわね。私もクラシックバレエが得意で、こんなに芸術的なのに体育科なのよ」
「そうなんですか……」
　自信家らしい先輩にちょっと戸惑いつつも、桜はエレナ先輩とアクセをめぐって盛り上がるのでした。

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