授業風景～番外編・自習の場合～２｜リアクション

授業風景～番外編・自習の場合～２

○自習はしっかりと

（四十九院先生、何かあったのかな……）
　突然の自習にざわつく教室の中で、恵御納夏朝は四十九院鸞先生の身を案じていました。
（フツウを壊そうとする存在の干渉とか、ないといいけど……）
　我ながら心配性だなと思いつつ、今まで色々あってのんびりばかりしてはいられなかったのです。
　とはいえ、特に不審なことがあったわけではなく、夏朝にできるのは真面目に自習することだけでした。
（……プリント、頑張って解くね）
　とりあえず、プリントを取りに向かう夏朝の目に、真っ先にプリントを取りに行った八神修の姿が映りました。
（楽しそうだなあ）
　皆自習で自由時間になり浮かれている様子ですが、勉強好きな修の場合はまた意味合いが違うであろうことを友人の夏朝は知っていました。
　一方、まだプリントを取りに来ない生徒もたくさんいます。
（各自自由にとるだろうけど、授業終わった後にとれてない人がいたら配りたいかな……）
　皆が勉強するかはわからないけど、授業後も受け取らなかったり、なくしたりしたら宿題としても解いてこれなくなるから……
　勉強好きではない生徒たちのことも心配してしまう夏朝でした。
　さっそくプリントを解き始めますが。
（物理、公民程じゃないけど、あんまり得意じゃなくて……）
　一枚とはいえ歯ごたえのある問題でした。
（でも……全科目９０点以上を取る・キープする為には、得意でなくても、避けては通れない！）
　そして夏朝の脳裏に四十九院先生の姿が浮かびます。
　敵として憎んだ相手に良く似た容姿に、以前は疑心暗鬼になったものでした。
　けれど接しているうちに、敵とは別扱いで平穏と安寧を願うようになったのです。
（四十九院先生を困らせたくもないから……頑張る！）
　楽しそうにおしゃべりをしている周囲を見ながら夏朝は思います。
（大きな音を出すとかしなければ基本的にそっとしておこう……あんまり大きい音を出したり外へ出ようとするなら注意しなきゃならないけど）
　図書委員長として、静かにするよう注意することが身についてしまっているのかもしれません。
（でもここは図書室じゃないから……なるべく注意せずに済むといいなあ）

（これは良い。今日の予定を前倒しできそうだ）
　自習と知り、修は内心喜んでいました。　
　勉強好きな修は、２年の夏が終わるまでに高校課程は終わらせる予定で入学時から自学を進めています。
　その後は受験勉強に専念する予定です。
　自習は帰宅後の予定を前倒しするのに最適な時間でした。
　まずはプリントを速攻で片付けます。
（これに時間を取られるわけにはいかない）
　とはいえ急ぎすぎてミスなどないように、さっと見直しは忘れません。
（さあ、楽しい勉強の時間だ）
　鞄から問題集を出し、机にドサリと詰みます。
　科目は先生にあわせ物理学です。
　普通の人なら大量の問題集にげんなりするところですが、素でわくわくするのが修でした。
　常人には一寸理解し難いのですが、家では延々勉強してしまうので、アラームかけるのが常である『勉強大好き八神さん』です。
　どんどんノートに要点をまとめていきます。

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