ボーッと生きててもやってくる！中学生の期末テスト＜物語編＞｜リアクション

ボーッと生きててもやってくる！中学生の期末テスト＜物語編＞

　寝子高付近にある３階建てビルの１階がゲームセンターとなっていた。
　紫はいくつか筐体を見て回る。蒼の好みは大体把握している。
（いた）
　正確には、ギャラリーが出来上がっていたので、多分そこに妹がいるだろうと思って覗いてみたのだ。
　中学校の制服姿で対戦型格ゲーをやっている蒼は目立つ。

（なかなかやるわね）
　蒼は、大会２位の自分と互角の勝負を繰り広げる男につい熱くなっていた。
　緊迫した接戦の末、一瞬の隙を突いてコンボを決める。
　おおっ、と歓声が上がった。
　蒼は凄まじい手さばきで対戦相手にコンボを決めまくっていた。
　そのまま勝負が決まった。
「……！」
　とどめを刺された青年の顔が一瞬悔しそうに歪んだ。
　だが彼は眩しそうに青に笑顔を向けた。
「すごいな。負けたよ」
「間一髪だった。ナイスファイトだったわよ」
　互いの健闘をリスペクトし合う二人。
「君、中学生だよね？」
「ええ」
　ゲームのライバルとしては魅力的だが、あまりしつこくされるのは面倒だな、と思う蒼。
　一部始終を見た後、紫は人ごみから一歩前へ出た。
「そろそろ帰りましょう」
「お姉ちゃん」
　見てたの？　という顔になった蒼だが、迎えに来てもらえたのは嬉しい。
　セミロングで落ち着いた美人の紫に、スーツ姿の青年はすっかり見惚れていた。
　よくあることだ。誇らしくもある一方、ちょっと不満を感じなくもない蒼である。
　青年に一礼すると、紫はきびすを返す。
　後を追う蒼に青年は声をかけた。
「次は負けない」
「私も負けないわ」　
　それだけ言うと、蒼は紫の背中を追ったのだった。

「テスト、どうだったの？」
　今の対戦のことには触れずにこやかに尋ねる紫。
「まあまあだったよ」
　蒼もご機嫌で答えるのだった。

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