ボーッと生きててもやってくる！中学生の期末テスト＜物語編＞｜リアクション

ボーッと生きててもやってくる！中学生の期末テスト＜物語編＞

◎返却日の新体操

　篠原翠響は、返却されたテストを受け取った。
　ざっと確認する。
「うん、悪くない」
　でもちょっとムラがあるかも、とは思っている。
（まあ、無理もないか。このくらいなら想定内）
　翠響は寝子島スポーツセンター内の体操クラブに所属している。
　来月は、横浜で開かれる関東ジュニア女子新体操選手権大会への出場権を獲得した。
　個人総合２位をマークしたけれど、自分ではちょっと不満が残る内容だった。
「翠響、どうだった？」
　クラスメイトが声をかけてきたが。
「うん、まあまあ。それじゃまたね」
　と挨拶もそこそこに、翠響は教室を後にした。

　寝子島スポーツセンターへ赴き、練習用レオタードに着替えたら、さっそく練習開始する。
　テスト期間中は身体がなまっていたのでケガのないよう入念にストレッチなどをこなす。
　ウォーミングアップした後は、練習とは思えないほど真剣に練習を始める。
　躍動する身体、躍るリボン、絶妙なバランスで止まるボール、流れるポニーテール。
（でもまだまだこんなものじゃない気がする）
　もっと上に行けるんじゃないか……そう思うと、まだまだ理想に近づいたとは言えない。
「張り切ってるね、篠原さん！」
　コーチのテンションも高い。声に期待がにじんでいる。
　何しろ今年は中学最後の夏、完全燃焼するだけじゃだめで、その上で全日本ジュニア選手権での優勝を割とガチで狙っているのだ。
　それはコーチにとっても同じはずだ。
　コーチは分け隔てなく平等に指導するのが建前ではあるが、長く一緒にやっていると機嫌や期待は手に取るようにわかる。
「それじゃ、目いっぱい手を伸ばしたところで止まって、背中をそらしてみて。そう！」
　翠響の熱が入った練習に、コーチもあおられて指導内容が高度になっていく。
（ラッキー）
　コーチは生徒のやる気を引き出し、生徒もまたはコーチの期待に応えてさらにコーチのやる気を引き出していく。
　コーチの賞賛と手拍子に乗せられ、翠響はますます自分のレベルが上がっていくのを感じていた。
　

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