携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード1｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　アイランドウォーズ　エピソード1

「一風変わった『お客さん』だけど……。『接客』と行きますか、っと」

　八重崎五郎八がバイト先であるホビーショッブ【ZePet】にて仕事をしている時にそれは現れた。
　ホビーショッブ【ZePet】では、店の一角にカプセルギアのコーナーを用意している。そこでは子供達がギアバトルに夢中になっていたりするのだが、そこに昏い緑の炎を揺らめかせるカプセルギアが出現したのだ。

　マスターの姿もなく独りでに歩くそのギアの存在に、段々と子供達が気付いて行く。
　既にこのカプセルギアの事は噂で広まっている。その為、万が一にも子供達がパニックになったりしないように足早にそのカプセルギアの前を塞ぐようにして五郎八が立ちはだかり一礼した。

「いらっしゃいませ、お客様。本日はどのようなご用件ですか？」
『ククッ。貴様もギアマスターか。用件？　そんなもの既に知っているのだろう？　俺と勝負するが良い』
「一応、仕事中なのですけどね……。まぁ、これも接客という事にしておきましょうか」

　溜息をつきながらも五郎八は自らのカプセルギアを取り出す。

「さぁ、皆。今日は特別にエキシビションを開催します。ギアバトルをよーく見て、参考にしてね？」

　イベントとするにはこのカプセルギア、ミノタウロスの存在は噂になり過ぎているがそれでも少しでもイベント風にしようと試みる五郎八。
　その甲斐あってか、子供達は顔を見合わせながらも少し距離を取って静観する事にしたようだ。

『では、行くぞ！』
「いつでもどうぞ」

　五郎八のカプセルギア、ジークルーネがバシュっと脚部についたホバーと背部についた可変式翼型ブースターによる飛行を開始する。
　飛行といっても高度自体はそこまで上げてはいない。ジークルーネの飛行は限定的という事もあって高度を上げる事にはあまり向いていない。ただ、こうして飛んでいるだけで噂のストンプ対策になるのだからそれで問題はないのだ。

「ジークルーネ」

　それは五郎八の静かな言葉。だが、それに応えるように変幻自在に動きながらジークルーネが左腕部の機関砲による牽制射撃を開始する。
　ジークルーネは可変式翼型ブースターと脚部ホバーによる機動力を備えた中・遠距離戦の射撃タイプだ。ミノタウロスのようなタイプに接近され続けるのは良くないと機動力を活かして立ち回る。

　それはただ単純に速く動くというだけではない。縦と横の軸の移動。緩急織り交ぜ更に随所に入れるフェイント。相手がどう動くかを予測しその逆に行動するという読み。
　機動力を武器にしているカプセルギアに取っては正しくお手本となるような動きであった。

『ブゥオォオオオオッ』
「防御するわよ、ジークルーネ」

　そして、ただそうして避けるだけではない。
　ミノタウロスの様なタイプに近寄られた際の対処さえ見せてみせる。

　左腕と一体化しているシールドを展開し、ミノタウロスの大槌を防御してみせる。
　しかもただ単に受け止めるのではなく、ウイングブースターやホバーによる旋回軌道を行いシールドそのものの角度も調整。相手のパワーをまるで川の流れのように受け流し、同時に自らの身体を相手の側面へと進ませて右手の双柄槍で貫いた。

『グガッ』
「本当はもうちょっと苦戦するのでしょうけど。悪いわね、ネタが解ってる相手に負けるつもりはないのよ」

　そう。ミノタウロスは多くの個体が存在しており五郎八とジークルーネの前に多くのギアマスターと戦っていた。
　ギアを破壊されるという被害にあった人もいるのだが、彼等とてただ負けたわけではない。彼等からの情報で既にミノタウロスの戦い方は知られてしまっているのだ。

『おのれ、おのれぇえっ！』
「さぁ、そろそろお仕舞にしましょうか」

　五郎八のその宣言通りに、その僅かに後にはミノタウロスの身体を双柄槍で貫くジークルーネの姿があった。

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