マジカル☆アイドル☆プロジェクト！｜リアクション

マジカル☆アイドル☆プロジェクト！

　テオの言葉を耳にした志筑かりんは、あらあらまあ、と、おっとりとして口元を押さえた。
「なんだか大変なことになっちゃったわねぇ。でもね、私これでも、昔アイドル目指してたのよ？」
　憧れてたの、と、少女のような笑みを零すかりん。
「小さい頃からの憧れが、まさか、今になって叶っちゃうなんて」
　のんびりとした声音に、わくわくと弾む色が滲んでいる。
　自身の衣装を検めて、かりんは、目元を益々以ってふうわりと和らげた。
　かりんのアイドル衣装は、巫女装束をアレンジしたようなデザインだ。
　その装いは、かりんの若々しさに、益々の華を添えていた。
　そして、そんなかりんの手には、桜柄の扇が。
　これが、かりんのマジカル☆アイテムだ。
　扇を開いて少し舞えば、かりんの動きに合わせて、桜吹雪が舞い落ちる。
「あら、素敵ねぇ」
　ふふ、と笑んで――かりんは、ぞろりと現れたアイドル達を前に、凛としてしとやかに立った。
　扇を手に、しゃなり、と舞う。
　花のように、鳥のように。風のように、月のように。
　日本舞踊風の動きの中に、時折、洋風のダンスも織り交ぜて、くるくる、くるり。
　桜舞い散る中で、動いているのはかりんだけだ。
　他のアイドル（だった者達）は、かりんの華麗な舞にときめき、うっとりとして見入っている。
　さあ、そろそろ、マジカル☆ライブの時間だ。
「うふふ、張り切っちゃうわよぅ♪」
　観客達へと茶目っ気溢れるウインク一つ、かりんは、決め台詞を淀みなく口にした。

『祓い給え清め給え、木花咲耶の名のもとに！』
　現れたステージは、桜の樹に見守られた、和の色に彩られたもの。
　その中央辺りには、大きなモニターが設置されている。
「まあ、すごいわね……あら？」
　モニターの方を振り返ったかりんは、思わず、その瞳を瞬いた。
　そこに、かりんに並ぶようにして、彼女のカプセルギアたる木花咲耶の姿が映っていたからだ。
　視線を、傍らへと移す。
　木花咲耶が、ちょこんとかりんを見上げて、愛らしく小首を傾げていた。
「ステージの魔法、かしら？　今は、スマホを操作しなくても動くみたい」
　そういえばこの衣装も咲耶とお揃いね、と、かりんは微笑ましさに口元を緩める。
　木花咲耶が、扇を高く天に掲げた。
　それを目に、かりんは、眼差しを柔らかくする。
「ええ。咲耶、一緒に踊りましょう？」
　こくり、と、木花咲耶が、どこか嬉しげに頷いた。
　ステージの上での舞は、１人と１体で、共に。
　時には、動きを合わせて。
　時には、片方がもう片方を引き立てるように。
　優雅に、優美に。けれどそこに、楽しげな色もそっと織り込んで。
　舞が終わる。木花咲耶もかりんと一緒にそっと膝をつき、三つ指をついて頭を下げる。
「御覧頂き、ありがとうございました」
　朗々としてそう音を紡げば、割れんばかりの拍手が、辺りの空気を満たした。
　拍手の音に、アンコールを求める声が混ざり、それはじきに大合唱へと変わる。
　顔を上げて――かりんは、ごく小さく首を傾けた。
「……あら、アンコール？」
　隣を見れば、同じく顔を上げた木花咲耶が、こくこくっと頷いて、かりんを促した。
「うふ、なんだか嬉しいわね。じゃあ、もう一度踊りましょうか、ねえ咲耶！」
　木花咲耶へと、にっこりとして呼びかけるかりん。
　そのかんばせを飾るは、桜の花も恥じ入るような、きらきらしい笑みの花だ。

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