マジカル☆アイドル☆プロジェクト！｜リアクション

マジカル☆アイドル☆プロジェクト！

　世は、（神魂の影響で突然）アイドル戦国時代。
　多喜美律は、闘争に明け暮れるアイドル達を前に、
「なーんかギスギスした世界ね」
　と、腰に手を当てて、息を吐いた。
「ギスギスを癒すのにはかわいいもの、かわいいといえばメンダコちゃん……」
　と、くれば！
「ここは、癒し系アイドル『メンダコ☆ガール』の出番ね！」
　ここで、マジカル☆アイドルたる美律（＝『メンダコ☆ガール』）のコンセプトについて解説しよう！
　先の言葉通り、美律の愛する深海生物・メンダコが、彼女のテーマだ。
　セーラー水着風の衣装には、バッチやポーチ等、メンダコ型のアイテムがきらりん。
　動きやすくてラブリーで、とってもいい感じなのである。
「さあ、頑張るわよ！　みんなを癒して、メンダコちゃんのかわいさも布教！」
　一石二鳥ね！　と美律が取り出すマジカル☆アイテムは、大漁旗。
　旗には、デフォルメされたメンダコが、でで～んと大きく描かれている。
「わ、かわいい！」
　ばっさばっさと風に靡く旗を見上げて、美律は瞳を輝かせた。
　と、新たなライバルの存在を見留めたアイドル達が、美律の方へと向かってきたのはその時だ。
「！　来た！　だったら……メンダコちゃんのかわいさと癒しパワー、見せつけてあげる！」
　大漁旗を応援旗のようにばさりと振れば――空から降るは、柔らかなメンダコのぬいぐるみ。
　たっくさんの可愛いメンダコ達が、辺りに、雪のように降り積もる――。
「わぷっ！？　う、埋もれ……」
　窒息はしないけれど、身動きは取れない。
　そんな適度（？）な量のぬいぐるみの山に埋もれて、アイドル達は暫しもがいていたが、
「ふわふわ……可愛い……」
　という具合で、じきに、皆うっとり。
　美律は、えっへん！　とばかりに胸を張った。
「かわいくて触り心地の良いぬいぐるみに埋もれたら、癒されちゃうでしょ！」
　辺りのアイドル（だった人達）はもう、すっかり戦意喪失している。
「こんな世界でやるアイドルってしんどいはずよ。だからあたしが、マジカル☆ライブで終わらせる！」

『メンダコちゃんの魅力、教えてあげるわ☆』
　決め台詞を言い放てば、そこはもう海の中だ。
　ステージを満たすは、深い深い青色。
　そこへ、スポットライトの灯りがちらちらと揺れ、海に射し込む太陽光を観客達に感じさせた。
「さあ、みんな！　楽しんでいきましょ！」
　美律の声を合図に、とびきりキュートなＢＧＭが流れ出す。
　その音楽に合わせて、美律は、レッツ・ダンシング！
　海中をふわふわ泳ぐ姿、海底にぺったりと落ち着く姿、耳をパタパタする仕草、などなど。
　動きは全部、メンダコのかわいさを表現したものだ。
（とにかく、メンダコちゃんのかわいい所を伝えたい！）
　ふわふわ、ぺったり、パタパタ……。
　全力で全身を使ったために、踊り切った時には頬に汗が伝っていたけれど、
　――わあああああああ！！
　ライブを終えた美律を包み込んだのは、割れんばかりの拍手と歓声だった。
　観客――もとい、ファンの皆さんを前に、美律は晴れた顔をして息を整える。
（ふぅ、どうにかやり切ったわ。拍手が貰えてるって事は、成功したのよね）
　拍手の音や、『メンダコ☆ガール』の名前を呼ぶ声。
　それに混じって、「メンダコ可愛いー！」「癒されるー！」といった声も、美律の元へ届く。
　美律の口元に、誇らしげな、きらきらしいような笑みが乗った。
「うふふ、メンダコちゃんのかわいさは深海一だもの、当然よ！」
　そして湧き上がる、一糸乱れぬメンダココール。
　この日を境に、寝子島にメンダコ愛好家がちょっぴり増えた……かも、しれない？

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