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【期末テスト】赤点？満点？？灼熱、四日間の死線＜物語編＞
●テスト３日目昼休み：元カレと元カノのちぐはぐな会話
元カレ――北里 雅樹は眠たそうな目をした高校三年生で、英語と家庭の試験を終えると夏バテ気味のため息をつき、ヘロヘロになりながら学食へとやってきた。
「クーラー本当に効いてんのか？ いきなりぶっ壊れたとかじゃないよな。この暑さ、勘弁してくれ……」
元カノ――椎井 莉鳥はぶっきらぼうで無愛想、少し無口な高校二年生。本当は雅樹と同じ年なのだが、個人的事情で一年留年している。そんな彼女もうんざりと青ざめ、学食へとやってきた。
「……あの蒸し風呂みたいな教室でよく最後までテスト続行できたわね」
暑さのせいで食欲はない。
しかし何も食べないままというのも、今日の暑さを考えたら空腹も相まって倒れそうな気がする。
そんな二人が頼んだものは、もちろん「カレー」。
毎日辛さを増して三日目、１日目より格段に赤い色が増えたカレーだ。
元カレの方は、毎日カレーでもあまり気にしていなかった。普通ならたとえ万能食カレーといえども三日も続くと飽きそうなものだが、猫鳴館暮らしをしていると同じメニューが何日続いても「ま、そんなもんか」くらいにしか感じなくなってくる。少なくとも40年前のニャンカレーを食べるよりはマシだ。
（※説明しよう！ 40年前のニャンカレーとは、かつて猫鳴館で発掘されたヤバいシロモノである！）
元カノの方は、ちょうど空いた席に座り、三日目のカレーを少しずつ口に運んでいたが、三分の一も食べないうちにスプーンが止まる。
「辛すぎ……」
汗をぬぐう。三分の一でこれだ。全部なんて食べきれるのだろうか。
水で口を潤し、そのままぼんやりとしていたら、向かい側の席に誰かが座る気配がした。
特に関心もなかったので無視していると聞き覚えのある声がする。
「よう、椎井」
焦点を合わせる。
そうするまでもなく、相手は分かっていたけれど。
こんなふうに自分に声を掛けてくる相手は世界中見渡しても一人しかいない。
幼馴染の元カレ。
「三分の一も食ってないのか」
柔和な笑みは相変わらず。
元恋人。今は腐れ縁。一時はたがいに惹かれあった。身体を許した。でも関係は終わった。
感情はもう、揺れない。
「ゆっくり食べてるのよ。今日はこれで終わりだし」
噛み合うような噛み合わないような返事をする。
「今日は終わり。でもまだ明日がある」
雅樹はそう言って、一口カレーを口に運ぶ。
スプーンが口に入ったと思った途端、雅樹は余りの辛さに顔をしかめた。
「くぅぅ。福神漬けがないと食える辛さじゃないな」
「福神漬けの問題じゃないと思うわ」
そういうと、莉鳥も止まっていたスプーンを再び動かし始める。
一口食べては、はぁ、一口食べては、ふぅ、とため息を漏らす。
一方雅樹は思い切って口に入るだけカレーを詰め込み、ごくりと飲み込む作戦だ。
食べ方すらもちぐはぐな二人は、スプーンを動かす合間にちぐはぐな会話をする。
「椎井、夏休みはどうすんだ？」
「あんたは受験勉強でしょ」
「そうなのか？」
夏休みはどうするかの質問に、質問返しの挙句に、そこにさらにボケる会話。
結局、最初の質問は忘れ去られてしまう。
「しかしなんでカレーばっかなんだ」
「カレーな気分なんでしょ」
「俺は冷やし中華な気分だな」
「この前は流しソーメンって言ったじゃない」
「そうか、でもまあ暑いよな」
確かに暑い。
そしてなんだか、お互いと話していると、すべてがどうでも良くなってくる。
「カレーって辛えよな」
「それ、ダジャレのつもり？」
「知ってるか？ 購買部のおばちゃんの名前、けっこうすごいんだぜ？ 美波瑠璃星影夢（びばるり ぽえむ・自称）さんと沙利菜愛利江留神通嗣（さりなありえる かぃなつおつぐ・自称）さんっていうらしい」
「あんたも魔阿箆須喜左衛門（まあべらす きざえもん・自称）とかに改名してみたら？」
「マとキしか合ってなくね？ あとなんで名前だけ江戸風なの？」
「なんとなく」
元カノは不思議に思った。
どうして関係の終わったはずの元カレと、気が付いたらまたこうして意味もなく落ちもなく甚だ不毛な微妙にかみ合わない会話を続けているんだろう。
元カレも不思議に思った。
相変わらず彼女は心が読めない。
俺は何で椎井とこんな会話を交わしてるんだろう。
カレーは辛い。
元カレと元カノの会話はちぐはぐ。
宇宙の真理みたいに並べてみたけれど、本当に何故か分からない。
そんなテスト三日目の昼休み。
元カレ――北里 雅樹は眠たそうな目をした高校三年生で、英語と家庭の試験を終えると夏バテ気味のため息をつき、ヘロヘロになりながら学食へとやってきた。
「クーラー本当に効いてんのか？ いきなりぶっ壊れたとかじゃないよな。この暑さ、勘弁してくれ……」
元カノ――椎井 莉鳥はぶっきらぼうで無愛想、少し無口な高校二年生。本当は雅樹と同じ年なのだが、個人的事情で一年留年している。そんな彼女もうんざりと青ざめ、学食へとやってきた。
「……あの蒸し風呂みたいな教室でよく最後までテスト続行できたわね」
暑さのせいで食欲はない。
しかし何も食べないままというのも、今日の暑さを考えたら空腹も相まって倒れそうな気がする。
そんな二人が頼んだものは、もちろん「カレー」。
毎日辛さを増して三日目、１日目より格段に赤い色が増えたカレーだ。
元カレの方は、毎日カレーでもあまり気にしていなかった。普通ならたとえ万能食カレーといえども三日も続くと飽きそうなものだが、猫鳴館暮らしをしていると同じメニューが何日続いても「ま、そんなもんか」くらいにしか感じなくなってくる。少なくとも40年前のニャンカレーを食べるよりはマシだ。
（※説明しよう！ 40年前のニャンカレーとは、かつて猫鳴館で発掘されたヤバいシロモノである！）
元カノの方は、ちょうど空いた席に座り、三日目のカレーを少しずつ口に運んでいたが、三分の一も食べないうちにスプーンが止まる。
「辛すぎ……」
汗をぬぐう。三分の一でこれだ。全部なんて食べきれるのだろうか。
水で口を潤し、そのままぼんやりとしていたら、向かい側の席に誰かが座る気配がした。
特に関心もなかったので無視していると聞き覚えのある声がする。
「よう、椎井」
焦点を合わせる。
そうするまでもなく、相手は分かっていたけれど。
こんなふうに自分に声を掛けてくる相手は世界中見渡しても一人しかいない。
幼馴染の元カレ。
「三分の一も食ってないのか」
柔和な笑みは相変わらず。
元恋人。今は腐れ縁。一時はたがいに惹かれあった。身体を許した。でも関係は終わった。
感情はもう、揺れない。
「ゆっくり食べてるのよ。今日はこれで終わりだし」
噛み合うような噛み合わないような返事をする。
「今日は終わり。でもまだ明日がある」
雅樹はそう言って、一口カレーを口に運ぶ。
スプーンが口に入ったと思った途端、雅樹は余りの辛さに顔をしかめた。
「くぅぅ。福神漬けがないと食える辛さじゃないな」
「福神漬けの問題じゃないと思うわ」
そういうと、莉鳥も止まっていたスプーンを再び動かし始める。
一口食べては、はぁ、一口食べては、ふぅ、とため息を漏らす。
一方雅樹は思い切って口に入るだけカレーを詰め込み、ごくりと飲み込む作戦だ。
食べ方すらもちぐはぐな二人は、スプーンを動かす合間にちぐはぐな会話をする。
「椎井、夏休みはどうすんだ？」
「あんたは受験勉強でしょ」
「そうなのか？」
夏休みはどうするかの質問に、質問返しの挙句に、そこにさらにボケる会話。
結局、最初の質問は忘れ去られてしまう。
「しかしなんでカレーばっかなんだ」
「カレーな気分なんでしょ」
「俺は冷やし中華な気分だな」
「この前は流しソーメンって言ったじゃない」
「そうか、でもまあ暑いよな」
確かに暑い。
そしてなんだか、お互いと話していると、すべてがどうでも良くなってくる。
「カレーって辛えよな」
「それ、ダジャレのつもり？」
「知ってるか？ 購買部のおばちゃんの名前、けっこうすごいんだぜ？ 美波瑠璃星影夢（びばるり ぽえむ・自称）さんと沙利菜愛利江留神通嗣（さりなありえる かぃなつおつぐ・自称）さんっていうらしい」
「あんたも魔阿箆須喜左衛門（まあべらす きざえもん・自称）とかに改名してみたら？」
「マとキしか合ってなくね？ あとなんで名前だけ江戸風なの？」
「なんとなく」
元カノは不思議に思った。
どうして関係の終わったはずの元カレと、気が付いたらまたこうして意味もなく落ちもなく甚だ不毛な微妙にかみ合わない会話を続けているんだろう。
元カレも不思議に思った。
相変わらず彼女は心が読めない。
俺は何で椎井とこんな会話を交わしてるんだろう。
カレーは辛い。
元カレと元カノの会話はちぐはぐ。
宇宙の真理みたいに並べてみたけれど、本当に何故か分からない。
そんなテスト三日目の昼休み。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年12月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年12月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年12月16日 11時00分
