飴玉の不思議！？｜リアクション

飴玉の不思議！？

　工藤来夢は漫画のネタ探しにと出かけた散歩中、困っているお婆さんに出会った。話を聞けば道に迷ったという。
「じゃあ、案内するわ」
「ありがとうねぇ」
　ネタ探しの傍ら、お婆さんを目的地まで連れていったのだった。
　別れ際にもらったのはレモン味の飴玉である。何故だか無性に舐めたくなり、その場で口へ運ぶと、
「！」
　体が縮んでしまっていた……！　まるで小学生だ。
「ええ？　一体どうなって？」
妙に視界が低いし、体が凄く軽い。
　来夢はパニック気味の頭を落ち着かせ、顎に手を当てた。
「あのお婆さん、別に黒づくめでもなかったけど……？」
　某探偵マンガを思い浮かべながら思考を巡らせるも、この現象がどういうものなのか、なんとなく理解していた。
「寝子島だもんね！　んー。別に正体がわかっても消される心配とかはないだろうけど」
　来夢はにやりと笑った。
「面白い漫画のネタの匂いがプンプンするわ！」
　せっかくこの姿になったのだ。小学校に潜入するのも悪くない。簡単に部外者が入れる場所でもないだろうし。
「よーし、さっそく小学校へ！」
　シーサイドタウンを歩いていると、何やら困っているお爺さんに出会った。どうやら道に迷ってしまったらしい。
　佐藤瀬莉はそんなお爺さんを行先まで案内してあげることにした。
　そして、
「ありがとうよ、お嬢ちゃん」
　お爺さんはお礼だと言って飴玉を一つ、瀬莉に渡すと手を振りながら去って行ったのだった。
「青……ブルーハワイ味だったかな」
　瀬莉はそう呟いて、口へと運ぶ。
「んむ」
　舌の上で甘みが広がる。それと同時に体がおかしくなった。ふわふわと浮かんでいるような感じがする。
「え？」
　いつもより、視界が高い。慌てて持っていた手鏡で自分の姿を確認すると、映っていたのは大人の綺麗なお姉さん。着ていた服は瀬莉の服、デザインそのままだが、サイズはぴったりだ。
「こんなこと前にもあった気がする。でも……」
　手鏡をまじまじと覗き込む。以前は二十代半ばの落ち着いた女性の姿だったが、今回は少し違う。美少女とも美女とも表現できる。大人になり切れていない若々しさ、二十歳前後だろうか。
「……どうしようかな」
　瀬莉が考え込んでいると、近くに木天蓼大学の建物があることに気づいた。
「二十歳前後ってことは、大学生に見えるってことだよね」
　自分で呟いてみたものの、少しドキドキしてきた。
「よーし」
　瀬莉は大学の入り口へ向かって歩き出した。

「ありがとう、お嬢ちゃん。そうだ、お礼にこれを」
百岳甘桃は道案内をしてあげたお爺さんから三種類の飴玉を見せられた。
「何？　これ？」
「飴玉じゃよ。お嬢ちゃんに一つ、あげよう」
「わーい、ブルーハワイ味ちょーだい！」
　そうしてお爺さんは去って行った。
　もちろん、知らない人について行ったり、物をもらったりしてはいけないことはわかっているが、その飴玉はとても魅力的に見えて、
「もう舐めちゃえ」
　甘桃は口へ飴玉を放り込んだ。
　そして、気が付くと、
「あれれ？　わたし、おとなになってるよー」
近くのカーブミラーに姿を映してみると背が高くなっていた。身長百六十センチcmぐらいだろうか。スタイルも良い。
　リボン型のヘアスタイルがミニサイズの団子になっていた。
「今はこの方が大人っぽくて合うかも」
　ふと、この近くにある、行きたかった店のことを思い出した。
「この格好ならおかしくないよね！」
いつもは入れない、アンティークな洋服の店だ。子ども服がなくて、ショーウインドーから見てるだけだったのだ。
「それじゃ、お店へれっつごー！」

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