テスト勉強しなくっちゃ。夏！｜リアクション

テスト勉強しなくっちゃ。夏！

◆
「綾辻さん、下校時間だよ」
ノートにペンを走らせていた綾花は、その声にはっと我に返った。
カウンター越しに向かい合っていた珪先生が、「ほら」と壁の時計を指さす。
時計の針は下校時間ちょうどを指していて、窓の向こうはすっかり夕暮れに染まっているようだった。
他の生徒はもう帰ったのだろう、図書室の中には人気が全くない。
夕暮れの射す図書室には今、綾花と先生の二人だけだった。
「もうそんな時間になったんですね」
席を立ち、綾花は軽く伸びをする。
同じ姿勢をしていたからか、背骨のあたりからポキポキと音が聞こえた。
「勉強はうまくいったかい？」
「はいっ、珪先生のおかげで、わからなかったところも解決しましたし。それに、とても集中できました」
なにせ時計を見るのも忘れて、他の生徒が居なくなったことにも全く気づかなかったくらいだ。
「そっか。その調子で、テスト本番まで頑張ってね。もう遅いし、今日は気をつけて帰るんだよ」
「はい」
勉強道具を片付けて、綾花は図書室の扉へと向かう。
扉に手をかけたところで、振り返って先生に笑いかける。
「珪先生、明日もよろしくお願いします」
一礼して、綾花は図書室を後にするのだった。

◆
ところ変わって、音楽室。
「……おや、もうこんな時間か」
洋二の声に、「えっ」と碧南は顔をあげる。
窓から射し込む夕暮れの気配は、いっそう色濃いものになっていた。
慌てて時計を確認すると、そろそろ下校時間。
つまりそれだけの間、先輩に勉強を教えてもらっていたというわけで。
「すみません、先輩も勉強してたのに……」
教えてもらってばかりで、先輩の勉強を邪魔してしまったんじゃ……とさすがに申し訳なさが顔を出す。
「簡単な復習をしてただけから」
それより、と。
「楽譜の読み方は、もう大丈夫そうかい？」
「はいっ、それはもちろん！」
髪が跳ねるくらいの勢いでうなずく碧南。
じっくり教えてもらったおかげで、完璧とはいかないまでも、かなりしっかり頭に入れることができた。
間違いなく洋二のおかげだ。
そんな碧南の様子に、洋二はふわっと優しげに微笑んだ。
「それならなによりさ」
窓の向こうの夕空を背にしたその姿は、学年以上に大人っぽく見えて。
碧南の頬が熱くなって、胸が一気に早鐘を打ちだす。

「あ、ありがとうございました……！」
変なことを口走ってしまう前に、と。
片付けもそこそこに、音楽室を飛び出す碧南だった。

……テスト本番も、頑張らないと。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：風雅宿
ファンレターはマスターページから！

どうも、風雅です。

皆さん楽しくテスト勉強していただけたでしょうか？
学生さん方には、個別に結果を記入させていただいております

テスト本番の方も、うまくいくことを祈っております。

それでは、また機会がありましたら。

余談ですが、図書室でのやりとりは、ちゃんと「周りの迷惑にならない声量」なのでご安心くださいね！

↑ページトップに戻る