セクシーボール！｜リアクション

セクシーボール！

●試合開始！

　パンティーズのコートの内で。
「尋常にとは申しませんが、勝負ッ！」
　少々不穏な台詞を口にした吉住志桜里が、膝に両手を突き、前傾の姿勢をとる。
　重力で下がったバストの谷間が丸見え。お尻もぷりんと持ち上る。

　月詠は、横に伸ばした腕を、しゅっと曲げた。同時にホイッスルがピッ！　と響く。
　サーブしていいですよ、の合図である。

「矢萩咲選手、サーブを打ちます！　この選手もいい身体をしていますね。あのまっすぐな背筋！　つんと上がったヒップ！　恥ずかしそうな顔もセクシーです！」

　そう言う晶の頬だってピンクにそまっているのだが、それは本人、気づかない。
「さあ、矢萩選手打ちました！　試合開始です！」

　ブラジャーズの紫苑は、咲のサーブをレシーブをするべく、腰を落として腕を伸ばした。
　それだけで、脇の下あたり布地が、乙女の柔肌にぐいっと食い込む。お蔭でバストの形が丸わかりだ。しかもお尻にはぴったりパンツが張り付いて――。
「服が窮屈で苦しいです……ああ」
　戦いの最中であるにもかかわらず、細く息を吐く紫苑。そのセクシーさに、双眼鏡を構えていた聴衆から、おおおと声が上がった。

「ユニフォームが小さいのでしょうか？　色っぽいです、巫部選手。ぐっと体温が上がりそうです……」
　晶の声が、マイク越しにおっとり響く。

　と、紫苑の腕にボールが当たった。しかしそれは、高くは上がったものの、ネット近くには戻らない。
「繋げなくちゃっ！」
　水樹はすかさず床を蹴り、ボールの下へと走り込んだ。額の上に伸ばした手で、ボールをはじく。オーバーハンドパス、いわゆるトスである。
（うん、今でもそれなりに身体は動くわね）
　高校二年のとき、怪我で引退するまでは、バスケをしていた。バレーとは勝手は違うが、運動能力自体はちゃんとキープされているということだ。
　トスは、極夜の前へと上がった。
「またこんなイベントですか……！」
　飛んできたボールを見ながら、たたた、と走って、とん！　とジャンプ！

「ああ、今、ミニスカートの下から、哀坂極夜選手の太腿が見えました～。白いですね～。もとが男性とは思えないきめの細かさです」

　せめてプレイについて実況したらどうなんだ、と。極夜につっこむ余裕はない。
　なにせ今は、一見清楚な女子に女体化中。
　初めてのことではないとはいえ、ぷわん！　と揺れる胸が邪魔で、戸惑ったのだ。
　一瞬ずれたタイミングのせいで、ボールの威力はほとんどない。

「チャンスですっ！」
　ネットぎりぎりを、ゆったり飛んできたボールをブロックすべく。
　パンティーズのアケーチ・タッマーキ――もとい、女体名称・明智珠姫は、ふわりと舞った。桜貝のごとき指先で、ひょいとボールをはじく。
「あっ……！　しまっ……！」
　極夜が手を伸ばすが、わずかに遅く。コート内に戻ったボールが、足元へ、ころころりん。

　ピッ！
　月詠が、ボールが落ちたところを指さし、笛を吹く。
　パンティーズ得点の合図である。

　と。
「いやああああっ！」
　ブラジャーズのユニフォームが、パアアアアン！　とはじけ飛んだ。

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