セクシーボール！｜リアクション

セクシーボール！

●戦いの前に

「…はて、ここはどこでしょう？」
　巫部紫苑はきょろりと周囲を見回した。いつのまにやら、体育館のバレーコートの中に立っている。
　着ている服は、『ネコジマ・ブラジャーズ』と書かれた、身体にフィットのぴっちぴち、太腿丸出し激ミニスカートのワンピースだ。
　にしても。
「ブラジャーズ？」
　ふと目線を上げた先では、観客が大きな旗を振っている。
「……Play　Sexy ball！　マタタビ・パンティーズVSネコジマ・ブラジャーズ……」
　書かれたものを、ぼんやり読み上げた直後、紫苑の頭に、セクシーボールとはなんぞや？　というデータがピピピ！　っと思い浮かんだ
「なるほど、相手チームを全員裸にすれば良いんですね？　やるだけやってみましょう」

「これは……逃げ出せそうな雰囲気じゃないわね」
　紫苑の隣で、城山水樹はため息をついた。得点を決められたらマッパ、得点を決めても相手チームがマッパになるだけなんて、水樹自身に得がなさすぎる。
「まったく、なんでこんなことになるのよ。私のマッパを見ていいのは、愛しい人だけなのに」
　とはいえ、もうやるしかない。
　水樹は手首のシュシュで、長い髪を一つに結んだ。腕を上げたせいで、きつきつワンピに包まれた、大きな胸がつんと上がる。
　その下はぺったんこのお腹と、まろやかまあるいヒップ、しなやかな足であるから、見惚れる人が続出だ。

　その見惚れた一人に、元男の娘、今女の子の実況・新井晶がいた。
　正直ついさっきまでは、なぜか自分が、純白の下着姿になっていることに困惑していた。
　だって考えてみてほしい。ふと気がついたらマナイタの胸がふっくら盛り上がり、それをウェディングドレスのようにひらひらな、レース山盛りブラが包み込んでいたのだ。
　しかし、水樹の麗しバストを見てしまったら、そんな驚きは大したことではないと感じてしまう。
「すごい、綺麗な身体ですねえ。皆さん見ましたか、あのバストライン！」
　そううっとりした声で告げる晶のバストは、実況席の机の上にのっている。
　なんと65のKカップ。人のバストをどうとか言っている場合か。

　さて、浮かれたり困惑したりしている参加者の中で、最も冷静なのは、審判の旅鴉月詠である。
　彼女はごく一般的なジャージ姿で、ネット脇の審判台にちょこんと座り、両チームを見下ろしていた。
　椅子には、万が一、ボールやろっこんが飛んできたときのために、様々な絵が貼り付けてある。
　危険なものは封じ込め、審判をしてから、放出するのだ。
「さて、そろそろ始めるよ。みんな、ポジションはわかっているな？」
　ゆるーく問えば、選手がぞろぞろと、それぞれの定位置に動いていった。

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