朝、目が覚めて｜リアクション

朝、目が覚めて

　ふわふわ瑠奈は、今のところまだぽわーんとしていた。
　どうも様子のおかしい猫がいたり、幸次の体の使い方がおかしかったりするけれど、まあそれだけのことである。
　しかしここから始まる現象は、そうも言ってられないだろう。

　桜花寮で暮らす羽生碧南は、その日はまだベッドで眠っていた。
　むにゃむにゃ～と目が覚めてきて、じわじわ～っと脳裏によぎるヤバい予感。
　慌ててスマホで時間を確認すると、
「ヤバい」
　ここで一発で目が覚めた。
　バスケ部の朝練があったのに、この時間では大遅刻だ。
　今日はもう休む？　いや、少しでも参加するべきだろう。
　そう判断したら、あとは早い。
　まさにトランジション。睡眠というディフェンスから登校というオフェンスへ、素速い切り替えでドッタンバッタン。
　こういうときの碧南は、きっとスピード重視のろっこん持ちよりもきっと速い。
　あっという間に身支度をし、速攻で桜花寮を飛び出した。
　気がつけば学校はもう近い。この脚力は伊達じゃないのだ……
　が、そこでハタと気がついた。

「な、なんで？」

　道行く人が何故かみんなスクール水着、いわゆるスク水を着て歩いている！
　これは焼きスルメマスターのシナリオではないはずなのに、何故！
　そして恐る恐る自分の姿を見ると……

「なんで私、スク水姿で町ン中走ってんのよーっ！！」

　ちゃんと制服を着てたはずなのに、何故！
　胸のあたりには白い布がデカデカと貼られて、『２ー９　　羽生　碧南』と書かれている。
「個人情報ーッ！」
　ていうか、これは梅村マスターのシナリオでもないはずなのに、何故！
　碧南は走りながら思い出す。
（そういえば、以前にもスク水姿で町に出たことがあったわ。でもあの時は一定の条件を満たすことでスク水姿を見られずには済んだ。だからまだよかった。でも、でも今回はなんで！）

　ふわふわ瑠奈も、なんだろうと思いながら見ていた。
　なんで、なんでと言いながら走り続けているんだろう……？？？

「ハッ」

　ようやく立ち止まる碧南。
　この格好のまま学校に行くのはおかしい。というか、恥ずかしい。
　でも時間がないし、みんなも同じ格好だし、このまま行くべきだろうか。どうしよう。

　パシャ！　パシャパシャ！

　このような状況だから無理もないだろうか、ちょっと鈍感な碧南は無数のシャッター音を聞いてようやく気がついた。
　自分が交差点の真ん中でスク水姿で立ち尽くしていることに。
「と、撮らないでっ！」
　まるで撮影会の様相を呈しているこの状況に、碧南は逃げ出すように走り出した。
　次は、どこへいくのだろう。そのスピードに、ふわふわ瑠奈もついていけなかった。

「いってらっしゃ～い」

　また会えるだろうか？

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