せんせいといっしょ：吉田先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：吉田先生編

○学校探検中

「まずは２年１０組に行きましょう」
　時子は、ドア付近に立って説明を始めた。
「ここがお父さんが教えてるクラスです」
　前の戸から教室に入った時子は、ちかを連れて教壇の前に立つ。
「お父さんはここに立ってるんですよ」
　そう言うとチカを持ち上げて、教壇からの景色を見せた。
「すごい、たかいね！　いっぱいみえるね」
　チカは目を瞠って喜んだ。
「職員室がある北校舎へ行くなら、渡り廊下を渡っていけるけど……渡ってみる？」
　夏朝の問いに、チカは頷いた。
　
　チカのそばを歩きながら、小次郎には１つ気になっていた事があった。
　熊先生本人に直接理由を聞くのは気が引ける、もし機会があればチカちゃんにさり気なく聞いてみたい……
　とはいえ、どう切り出すべきか迷っているうちに、修がチカに話しかけた。
「チカちゃんは小学生だね。高校もお勉強するよ。小学校にはないお部屋もあるよ」
　渡り廊下を歩きながら修が説明する。
「どんなおへや？」
「視聴覚室やコンピューター室だよ」
「……きいたことあるかも、コンピューターはさわったことないけど、みらいっぽいの？」
「未来っぽい？　そうだなあ、動画とか見たりパソコンを動かしたりするんだよ」
「すごいね」
　コンピューター室に案内したかったが、鍵がかかっているはずだし授業時間以外に動かしてみせるわけにもいかないだろう。
　北校舎の学食の前を通りかかると、チカが中を覗きたそうにする。
「ここ、しょくどうなの？」
「学食……学生食堂ですよ。メニューを見てみましょうか」
　メニューを見たチカが読みあげる。
「ランチ……きつねそば、たぬきうどん、……てん、ぷらそば？」
　まだ漢字はあまり読めないようだ。
「おとうさん、ここでたべないのかな？」　
「きっとチカちゃんのお弁当が食べたいんだと思いますよ」
　時子が微笑む。
　ふと修が言った。
「そういえばチカちゃんは動物は好きかい？」
「うん、おとうさんとどうぶつえんにいくよ」
「そうか」
　修はその様子を想像して和みながら言った。
「いいね、俺もたまに行くよ。動物可愛いよな。ここさ、校長室に３匹の猫さんがいるんだよ」
「ほんと？！」
　チカの目が輝いた。
「チカちゃんも猫さん好き？」
　眠そうな夏朝の瞳も輝く。
　チカが頷くのを見て、修は言った。
「それじゃ、行ってみようか」
　
「ニャー」
「わあ、ほんとにねこさんだ！」
　三匹の猫に目を輝かせたチカが、猫を撫でようとする。
　修は猫を優しく抱き上げ、チカが撫でるのを手伝った。
「だっこしていい？」
「ああ」
　修は猫が嫌がらないようそっとチカに渡す。　
「かわいいねえ」
　チカは嬉しそうに猫を抱っこしていた。
（本当に動物が好きなんだな）　
　修も夏朝も、みんなその様子に和まされる。
　途中コンピューター室も、ガラス張りの窓から覗くことができた。
「コンピューター、いっぱいだね！」
　珍しそうにチカが言った。