せんせいといっしょ：吉田先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：吉田先生編

○お弁当を届けに

　椎井莉鳥は、陸上部の朝練を終えてシャワーで汗を流し、制服に着替えて教室へ向かおうとしていた。
（えっ？）
　そこで目を疑う羽目になった。
　目の前には、きょろきょろとあたりを見回しているランドセルをしょった小さな女の子。
　いつものように理科室の五十嵐先生へお弁当を届けに向かっていた御巫時子も、びっくりして足を止めた。
「こんにちは！　よしだくまきちはどこにいるかしりませんか？」
　小学１年生くらいのその子が二人に話しかけてきたのだ。
　一瞬莉鳥は戸惑った。
（迷子……ってことはなさそうだけど……？）
「どうしたの？」
　莉鳥は淡い微笑を浮かべて話しかける。
　普段は無表情を貫いている莉鳥だが、必要があれば笑うくらいのことはできる。
「よしだくまきちのむすめの、チカです！　しょうがく１ねんせいです！　おとうさんがおべんとうわすれたので、とどけにきました！」
　元気に答えるチカ。
「一人で来たんですか？　えらいですね」
　おっとりした時子は優しく声をかけ、チカに目線を合わせて頭をなでなでした。
「こうこうって、しょうがっこうとちがうね。おもしろそう」
　きょろきょろしている姿に、学校の中も見て回りたそうだな、と莉鳥は気づく。
（授業が始まるまで少し間があるので、時間が許す限り、チカちゃんにつきあおうかな）
「きっと熊吉先生も驚かれますね。案内しますね」
　興味津々であたりを見回すチカの姿を微笑ましく思いながら、時子が手を差し出した。

（今日も平穏そう）
　ほっと一息ついた恵御納夏朝は思っていた。
「さて、今日も色々頑張ろう！　……って、あれ？」
　小さい女の子を見て、夏朝は考える。
（なぜ高校に子ども？）
　その子はこちらを見て、見覚えがある、というような反応をした。
（あの子は……吉田先生の娘さん、かな？）
　チカにはかつて別人格・夏夜が会ったことがある。
　夏朝の記憶にはないが、夏夜が詳細を記したメモを読んだのだ。
「こんにちは……久しぶり。えみな・かーさ、です」
　近づいて自己紹介をする。
「こんにちは！　おひさしぶりです、よしだチカです」
　事情を聞いて、夏朝も同行することにした。
「僕もチカちゃん案内するよ」

「なんだ？」
　化神小次郎は小学生の女の子を発見した。
　ちなみに小次郎と言う名前だがれっきとした女子で、胸も大きいし美形である。
「こんなとこでどうしたんだ？　誰かの妹か？」
　チカの自己紹介に目を見開く。
「なんと！熊センセーの娘さんか」
　子供がいるのは知っていたが、実際に見たのは初めてだ。
「弁当を届けるついでに校舎内を見て回りたいなら、案内するぜ。あたしは相撲部のマネージャーだ」
　
　八神修もチカを見つけて近づいてきた。
「お弁当を届けに来たのか。感心だな」
　理由を聞いて納得した修。
「俺は八神修。吉田先生にはいろいろお世話になってるよ。せっかくだから、学校をちょっと探検しようか」
　と笑顔で提案した。
「たんけん？！」
　目を輝かせるチカ。
　こうして一行の寝子高探検が始まった。

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