せんせいといっしょ：吉田先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：吉田先生編

○フツウを守るため

「また神魂か！」
　御剣刀は、いつものように近くで起きた神魂絡みの事件を知ってしまった。
「大きな騒ぎになる前にちょっと行ってくるか……げっ、鬼熊！？」
　しかしあいにくここは学校で、今は授業時間だった。
「こら御剣、どこへ行く！」
　吉田先生に見つかってしまった！
（テオのやつ世界切り分けてくれないのかよ！　フツウを守るために普通の生活が犠牲になる事もあるんです、仕方ないんです！　はい、言い訳です）
「ただちょーっとマジでどうにもならないんだ、すまん鬼熊」
　いつものように加速して逃げ切ろう……と思ったのだが。
　かたな　は　にげだした！
　しかし　まわりこまれてしまった！
　巨体が、信じられないスピードで動く。さすが相撲の稽古を欠かさないだけある。
「このバカタコが！」
　この日一瞬遅く、刀は吉田先生に捕まってしまったのである。
（って、しくじったー！？　捕まったじゃねえか俺のアホ！）
「違うんだ、違うんです！　あれです、緊急事態です、持病のしゃくが出て病院に行こうかと思いまして！」
「何い？　全然元気そうだぞ！」
「はい、そんなものありません超健康です、俺の事よく見てるね！」
　仮病作戦はあえなく失敗した。
「あー、もう本当に緊急事態なんだ、今行かないと間に合わないんだ！見逃してくれ鬼熊！　ある意味学校の授業より大事なの！　それくらい緊急事態なの！！」
「御剣……？」
　魂の叫びに吉田先生は一瞬ひるみ、その隙に刀は逃亡した。
「終わったら帰ってくるから、反省文書くから！！」

　そして帰ってきた刀は吉田先生に捕まり、反省文を書いていた。
「御剣、お前悩みでもあるのか？　困ったことがあるなら一人で抱えず相談しろ」
　隣で話しかける吉田先生。
「別に悩みはないですよ？　楽しくやってます。今日は緊急事態だったので、フツウがねヤバかったんです」
「普通？　どういうことだ？」
「普通じゃなくてフツウ、アホの神様がやらかしちゃった後始末というかですね」
「……御剣、お前何か怪しい宗教に関わっとるのか？」
「宗教じゃないです説明が難しいな」
　本気で心配そうな顔になった吉田先生が刀に尋ねる。
「ご両親とはどうなんだ？　何か悩んでいるならいつでも俺に話すんだぞ」
「両親との仲は悪いけどそういう関係じゃないですから気にしないで……でもありがとうございます」
　らっかみや神魂のことを理解してもらうのは無理な相談だった、と刀は諦めた。
「そういえば娘さんが来てたんですね、お父さん好かれてますね」
「いや……まあ親一人子一人だからな」
　照れたように吉田先生は言い、また怖い顔になる。
「俺のことはいいから、お前の話だ！」
「はいスミマセン、反省します」
　刀の反省文はなかなか終わりそうになかった。

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