せんせいといっしょ：ジャン先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：ジャン先生編

●自然の音

　スマホで録音しながら、水上桜は校内を探索中。
　部活で泳いだばかりのプールの水面は、吹き抜けた風で動き、かすかな水音を立てた。
　風は水面だけでなく、木々を揺らす音も立てた。
「水の音、風の音、風に揺られてかすかに響く風鈴のような音……」
　録音した音を再生して聞くと、少々の雑音が。スマホで聞かせるより、実際に聞いてもらうほうが好きな音と説明しやすいかも。

　ジャン先生と合流すべく待ち合わせ場所に向かう途中、龍目豪とぶつかった。
「大丈夫か？」
　ぶつかった拍子に尻餅をついた桜に手を差し出し、彼女を立たせる。
「大丈夫です……。慌てていたようですが」
「俺の音、早くジャン先生に聞いてもらおうと思ってな」
　覗きと間違えられたので焦って逃げ出した、とは言えない。
「龍目さん、ジャン先生が噴水の前で合流しよう言っていましたよ」
　録音機材を返そうと思っていたので、豪は桜と一緒に待ち合わせ場所へ。

　噴水前には、耳をすまして水音を聞くジャン先生がいた。
「好きな音、見つかった？」
　そう問われた２人は、音を探すのは意外に難しいと答えた。
　桜は録音したものは自分の好きな音だと言い難く、豪は録音機材を借りたものの、好きな音を見つけられず。
「これ、ありがとう。音探し、すごく楽しかったぜ」
「私は好きな音を見つけることができましたが、聞かせることができないのが残念です」
　録音が上手くできませんでした……とがっかりする桜。
「桜サンはどんな音が好きデスカ？」
「水滴が落ちる様々な音や波音。吹き抜ける風で木の枝や葉っぱが揺れるといった音です」
　それらを録音したので聞いてもらいたかったが、風の音は雑音になってしまったのが残念でならない。
「風の音は、良い機材を使って録音しても、マイクを叩いているような音になりマス」
　桜の肩に手を乗せて、だから気にしないでとジャン先生は慰めた。

「豪クンは、どんな音を見つけたかったのカナ？」
「い、息遣いっす！　運動部員は息を切らして一生懸命、練習しているでしょう？」
「アクティブなユーらしいデスネ」
　動き回って暑かったデショウ？　とジャン先生は桜と豪に冷たい飲み物をご馳走することに。
「好きなモノ選んでクダサイ」
　そう言って指さしたのは自販機。
「自販機の音は馴染み深いよな。缶が落ちた時の音とか」
「当たりルーレットがあるものは、回っている間ドキドキします」
　身近なところに聞き慣れた音があることを再確認した豪と桜は、冷たい飲み物で一息つく。
「学校を出て、他のトコロに音を探しマショウ」
　校外学習デス、と校内を出て、どこに行って探そうか３人は歩きながら考える。

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