せんせいといっしょ：ジャン先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：ジャン先生編

●音を探そう

「暑いわ……」
　水泳部と家庭科同好会をかけもちしている水上桜は、今日は水泳部の活動日だった。
　プールでの練習が終わり、制服に着替えたばかりなので長い髪はまだ湿り気が残っている。
　髪を気にしつつ、桜花寮に着く頃には乾ききるだろうと思いながら寮に行く途中、教室に忘れ物をしたことを思い出す。
　急いで教室に戻り、忘れ物を取りに行く。
「思い出して良かった」
　これで安心して帰れると校舎棟を後にしようとした時。
　中庭でジャン・ポランスキー先生がハンドマイクを茂みのほうに向け、真剣な表情で何かを録音しているのを見かけた。
（何をしているのかしら？）
　邪魔をしないよう、桜はそーっと近づき様子を見る。
　仕事中のような真剣な表情は次第に緩くなり、見ていて微笑ましい表情に。
　目的の音が録音できたのか、ジャン先生がハンドマイクを引っ込めた。
　声をかけても大丈夫そうと判断したので、何をしているのか聞いてみることにした。
「ジャン先生、何をなさってるんですか？」
「音探しダヨ。ユーも一緒に素敵な音を探してミル？」
「音探し……ですか。面白そうですね。お付き合いします」
「ユーにとっての良い音、見つかるとイイネ」

　２人のやりとりを見ていた龍目豪は「何をしているんだ？」と気になり話しかけた。
「彼女とイッショに音探しシマス。ユーもドウ？」
　音を探す探検のようなものか、と豪はそう思った。
　彼は探検部の活動で自然の中は歩き回ってるが、立ち止まり、ゆっくりと音を聞く機会があまりない。
「音を探す探検も面白そうだ」
　興味を示したので、豪も音探しをすることに。
「それにしてもすごいですね、この集音マイク。どんなふうに聞こえるんすか？」
　ジャン先生は「試してミル？　良く聞こえるヨ」とヘッドフォンを外し、ハンドマイクと一緒に手渡した。
「それじゃ、遠慮なく」
　ヘッドフォンをつけ、ハンドマイクを動かしながら豪は周囲の音を聞く。
　吹き抜ける風の音。飛び交う鳥の声。噴水の音。校内にはいろいろな音があった。
「ありがとう、先生。すごく性能いいな、この機材」
「フランスにいた頃、録音マンしてマシタ。それで、どの機材が良いかわかるようになりマシタ」
　映画の仕事に関わっていたこともあり、より良い音に拘る一面も。
「ジャン先生は映画研究部の顧問でしたね。部活でも音を楽しむことを教えているんですか？」
「モチロン。映像もだけど、映画は音も大事ダヨ」
　両方が良ければ、いい映画になるデショ？　とジャン先生は嬉しそうに答えた。
　日常の中にも、いろんな音がある。そのことを知った豪は、早く音探しをしたかった。
　それを察知したジャン先生は、楽しみながら音を探そうと行動を促す。

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