せんせいといっしょ：ジャン先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：ジャン先生編

●躍動の音

「ユー達は、どんな音が好き？」
　ジャン先生の質問に、水上桜はどう答えたら……と考え込む。
「俺の好きな音は、心臓のドキドキだな♪」
　それに対し、龍目豪は「速くなる鼓動が好きだ」と即答。
「生きているって実感できる音ダネ」
　活動的な豪の好きな音は、行動的な彼らしさを表現しているようだ。
「私達の周りには、様々な音があふれていますね」
　桜は意識して耳を澄ますと、寝子高敷地内に多くの音があることがわかった。

　音探しをするのはいいが、建物内の音は聞き耳を立てる程度で聞こえない。
　ジャン先生のハンドマイクは性能がいいはず。
　そう思った豪はマイク貸してください！　と手を合わせて頼む。
　ジャン先生はヘッドホンを外すと、録音機材の入ったカバンとハンドマイクを差し出した。
「いいんすか？」
「ユーが音を探すのに使ってくれるの、ミーは嬉しいヨ」
「ありがとう、先生！」
　さっそく探すぜ！　と機材を壊さないように大事に持ち、豪は走り出す。
「元気な先輩ですね。私は、スマホでいろいろな音を録音してみます。先生はどうしますか？」
「桜サンがしていたように、自分の耳で音を聞きマス」
　ヘッドフォン越しに聞く音もいいが、自然な音を直に聞くのもいい。
　ジャン先生は音探しをすると言ってくれた生徒２人の様子を見て音を聞く楽しさ、素晴らしさを再確認した。
「ミーもイロイロ探しシマス。豪クンに会ったら、噴水の前で合流しようと伝えてクダサイ」

　何事も試すべし！　と豪が向かった先は部室棟。見られないように音を聞くので１階の体育系クラブ限定。
　プレハブなので、マイクを押し付ければ何かが聞こえるはず。
「壁にマイク押し付けたら、中の音、聞こえるかな？」
　まず聞き耳を立てるが、案の定、何も聞こえず。だったらこれをとヘッドフォンを着け、ハンドマイクを壁に押し当てる。
「お、女子の笑い声が聞こえる……何か噂話してるな」
　マイクを押し付けたのは体育系の女子クラブ棟。
　壁はさほど厚くないが、ところどころの会話の聞こえが良くない。
「直接、耳を当てたほうがいいか？」
　ヘッドフォンを外し、耳を壁に押し当てる。その様子を運悪くクラブ棟にやって来た女子達に見られた。
「覗き……？」
　しゃがんで音を聞いていたので、窓から覗こうと勘違いされるのは仕方がない。
「ち、違う、覗きじゃねえ！　すまん！」
　その場を慌てて逃げ出した時、胸の鼓動がすごく早くなった。
「なんで、こんな時に……」
　涙目な豪は猛ダッシュでクラブ棟を後にした。

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