呪いの魔剣｜リアクション

呪いの魔剣

「きゃあああああああ」
「何だっ！？」

　自室で寛いでいた八神修は突然の悲鳴に驚いて立ち上がる。
　慌てて窓から外を覗いて見れば、そこには寝子高の女子生徒が何かに怯えるように後ずさっていた。

「何かに襲われてる……？　一体、何だ？　いや、兎に角、助けなければ！」

　既に夜になっている為、辺りは暗い。その為女生徒以外は良く見えないが、兎も角駆けつけるのが先決だと修は殺虫スプレーと木刀をひっ掴んで飛び出した。

「何だ、あれは！？」

　そうして飛び出した修の目に入ったのは、見ただけで不吉な予感に襲われる黒い剣だった。しかも、ただの剣ではなく虫のような脚と異常な程に血走った眼球を持っているのだ。
　ギョロギョロとした目は未だ怯えている女生徒と修へと視線を行ったりきたりだ。

（このままじゃまずいな……）

　修が女生徒の様子を伺ってみるも、とても動く事が出来るとは思えない。

（待てよ。あいつは剣、だよな？　なら、分解が効くんじゃないか？）

　修のろっこんである『分解』は視界の範囲内ならば特に触れなくても効果がある。もし、通じるならば安全に倒せるだろう。

（やってみるか）

　そして、分解を発動させる。――しかし、修の視界の中にいる剣の化け物に変化は現れない。どうやら剣の身体を持っているとは言え、一応は生物という事なのかもしれない。
　ならば、女生徒に危害を加える前にこちらに気を引くしかないと修は考えた。

「おい、俺が相手だ！」

　持ってきた木刀を構えつつ、修は被害者と魔剣の間に割り込む。必然的に剣の化け物の視線は修1人に集中する事となるが、それは彼の思惑通りだ。

「はぁあっ！」

　相手の間合いに注意を払いつつも、木刀を思いっきり相手へと打ちつける。
　打ちつけた後はその場に佇むのではなく、即座に移動を開始。そうして相手の攻撃に捕まらないようにしつつ女生徒から引き離すのが修の狙いだ。
　すると剣の化け物はそんな修の行動を鬱陶しく感じたのか突如として黒い靄を纏った。そして、それが腕の形を成して修を捉えるように動き始める。

「また妙な力を持ってるなっ」

　修を捉えようとする黒い腕。牽制するように修が木刀を振るえば、しかしそれ等はまるで霞のように消え失せる。
　どうやら木刀で対処する事が出来ると判断した修は、的確に木刀の一撃で黒い腕を切り払っていく。

　そして、硬直したかのようにその場を動かない剣の化け物へと間合いを詰めると木刀を上段へと構えたと見せて殺虫スプレーを眼球付近に噴出した。
　辺りに響く金属が震えるような音。それが一体何なのかは解らないが、剣の木刀が悶えている様子からしてどうやら効果はあったらしいと修は気付く。

「貰った！」

　修は冷静に体勢を引くくし、剣の化け物の支えている足を木刀で薙ぎ払う。
　すると、殺虫スプレーで目を潰されていた事もあって剣の化け物はいとも簡単に地面へと転がった。

「これで終わりだ！」

　地面に転がっても尚悶えている剣の化け物。しかし、ここで容赦をする理由は修にはない。
　倒れた剣の腹を踏みつけて、木刀の切っ先で力一杯上から突く、突く、突く。
　それは剣の化け物が折れるまで続けられた。

「……一体、こいつは何だ？」

　剣の化け物を見事打ち倒した修はそんな風に呟くも、それに答える者はいない。
　ふと気になってねこったーを見てみれば、どうやらここ以外にも似た様な存在が確認されているようだ。

「これは非常事態だな……。こうしてはいられない」

　だが、一先ずは先程の女生徒の安否を確認する為に修は女生徒の方へと向かうのであった。

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