【星幽塔】第六階層　雲氷を探して｜リアクション

【星幽塔】第六階層　雲氷を探して

「よし、行こう亮！」
　長い金髪をなびかせ、ルーク・ポーラスターが元気に歩き出す。
　その後姿に新田亮は声をかける。
「ちょっと待て、準備させてくれ」
（正直寒いのは苦手なんだよな）
　ルークとは一緒に冒険して仲良くなった。
　嬉しそうに声をかけてきたルークにOKしたのは、弱みを見せたくなかったからだ。
　小柄な自分よりさらに背が低いルークに、亮は尋ねる。
「飛行船には乗らないのか？」
　亮の言葉にルークは、何言ってんだ？　という顔をして、それからドヤ顔でお得意の勇者の心得を唱えた。
「勇者の心得その５０、回り道にこそ発見がある！」
「わかったよ、防寒対策をしてから行く」
「動けばすぐ熱くなるさ」
　ルークはこともなげに言うが、氷を食べに行くのだ。
　防寒用のマント、そしていつもの装備も準備して。
（雲氷はどんな味がするんだろうか）
　とろけるような甘味だとルークは言っていた。
（なら甘いシロップはいらないよな）
「よし、準備できたぞ」
　と、ルークのほうを見ると、いつのまにか美少女に声をかけている。
「キミの鳥も、雲氷の場所を教えてくれるかもしれない！」
「美味しい氷ですか？　ぜひ食べてみたいですね」
　声をかけられた御巫時子は、笑顔で答えた。
　肩には瘤のように動かないが、ヨタカが留まっている。
（よくあれが鳥だってわかったな）
　ルークの目ざとさとフットワークの軽さに感心する亮。
「この子は同居鳥のヨタカさんです」
　ヨタカを紹介する時子だが。ヨタカが何かを見つめているような様子に気づく。
「ヨタカさん？　何か気になることでも？」
　ヨタカさんの視線の先を見ると、日陰の大きな樹に、目立たない小さな洞があった。
　雪が少し残っているのが見える。
（氷室になりそうですね）
　時子はそんなことを思った。

「星幽塔でも最近は地上並みに暑くてたまらないわ。なぜ夏はこんなに暑いのかしら」
　見た目は大人しめで愛らしい容姿だが、やや短気な水上桜である。
　そこに声をかけたのがルークだ。
「キミも雲氷を取りに行かない？　とっても冷たくて、甘くておいしいよ」　
「雲氷？」
　話を聞いた桜は思う。
（それでかき氷を作ったりしたらさぞ涼しくておいしいんだろうな……）
　というわけで、桜の決断は早かった。
「夏はやっぱりかき氷で決まりよね！」

「あ、お弁当くださーい、ビールも！」
　アリス・ミーティアが商人に声をかけた。
　買い物と共に、情報もいろいろ聞いている。
「雲氷美味しそう！　ドロフも一緒に持ち帰りたいな」
　お弁当とビールを鞄に入れ、背中の白い羽を広げて飛び立つ。
「もこもこの鳥を見つけたらいいんだね。よーし、飛びながら探すよ」
　
「一番いい地図を頼む」
　双眼鏡を首に下げた八神修は、信頼できそうな商人から地図を買った。
「地元民なら知ってるだろう？　雲氷ポイントはどこだ」
「あくまで例年の参考だが……」
　謝礼を渡し、聞き出したポイントを地図にしっかり記入する。

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