Father's Day がやってくる｜リアクション

Father's Day がやってくる

○似たもの父子

　寝子高１年の楡宮遠海は、横浜に住む父の自宅を訪れました。
「よっ、来たな」
　笑いながら出迎えてくれた父は、遠海が１０歳の時母と離婚しました。
　現在は不動産会社に勤めて一人暮らししています。
「道に迷わなかったか？」
「タクシーで来たから大丈夫よ」
　タクシーで来たのは、道に迷わないためだけではなく荷物があったからですが。
　父は家事が結構上手で、少なくとも娘が数か月に一度マンションを訪れた時に、散らかり放題の惨状を呈していることはなかったりします。
「今日は父の日だから、今日の夕飯は父さんの大好きな生姜焼きをつくってあげるね」
　と言ってたくさんの材料を台所に展開します。二人で食べる分にしては妙に多いものでした。
　それを見た父は苦笑いしました。
「相変わらず遠海は大食いなんだな」
「ダイエットの必要ないもの」　　
　母子家庭で育ってかなりしっかりしている遠海の料理は、安心して見ていられる手つきでした。
　父親の分も大盛ですが、遠海のは皿に３枚分、大盛で生姜焼きが載っていました。
　そう、遠海はやせの大食いなのでした。
「いただきます」
　二人で食卓を囲みます。父は生姜焼きを一口食べ、笑顔になりました。
「前よりうまくなったな」
「そう？」
　そう言ってもらえると照れてしまう遠海です。
　遠海の相変わらずの大食いぶり──どんぶり飯に大量の生姜焼きをかき込む姿を見て、
「そんなに食べたら太るぞ」
　と父は冷やかしますが。
　ひるむことなく食べ続け、肉の一片も残さず平らげるのでした。
　食べ終わると、父がデザートを出してくれました。
「美味しそう！」
　長い睫毛の下で遠海の瞳が輝くのを、父は嬉しそうに見ていました。
　デザートを食べ終わると遠海は、学校での出来事とか軽音部のことなどを話しました。
　父は頷き、笑顔で聞いてくれるのでした。
　
　時間はあっと言う間に過ぎて。
　夜に駅まで送ってもらいました。
「父さん、また来るからね」
　振り向くと、父はまだそこにいて遠海を見送っているのでした。

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