Father's Day がやってくる｜リアクション

Father's Day がやってくる

○フクザツな思い

　父の日当日。
　環的子は、贈り物用に頼んでた花束を取りに行きがてら、お散歩していました。
（チョイス、間違ってないといいなぁ……）
　お母さんは「的子の贈る物なら何でも喜ぶ」って言っていましたが。
（お父さんはお金持ちだからすごく悩んだ。結局これなら無難って事で、お花屋さんに花束を頼んだよ）
　道中、何だか色々考えてしまいます。
（お父さんは、私の「実の」お父さん）
　そんな言い方になってしまうのは、この年まで一度も会った事なかったから。
（初めは驚いたけど、恐る恐るお父さんの顔を見たら「あ、嘘じゃないんだ」って思ったんだ）
　……お父さんの三白眼が、的子にそっくりだったのです……
　お父さんは、涼しい顔して笑ってるけど緊張してて、饒舌なのに会話がしょっちゅう止まる人でした。
（最後はいつも私が逃げちゃうけど、悪い人ではない、と思う。未だにお父さんの前で「お父さん」って呼べないし、お父さんからも名前を呼んでもらえてないけどね……）
　会ったばかりだから、どう接していいのかわからないのです。的子だけでなく、たぶんお父さんも。
　そんなところも似ているのでしょうか。
（衣食住に困らない。生活費丸々出してもらってる。明日の心配をしなくていい。遊ぶ余裕だってできた）
　小学５年にして抱くそんな思いは、的子が今までどんな苦労をしてきたかを物語っていました。
　気を抜くと今でも食事の際にがっつく早食い癖が出てしまいます。
　事情があるのだろうけどやっぱり思ってしまうのです。
（最初からお父さんが居れば、お母さんも私も、苦労しなくてよかったんじゃないかな……って）
　恨んでいるわけではありません。それは本当です。
（でも、でも……）
　そんなことを考えているうちに、いつの間にか、お花屋さんに到着していました。

「こんにちは、お花を受け取りにきました」
「いらっしゃませ、環さんですね。どうぞ」
　お花屋さんに勧められて選んだ黄色いバラの花束。
　リボンの色は淡い水色にしてもらいました。
（私とお父さんの、瞳の色）
　とりあえず今は、これを渡そう、と思う的子でした。
　

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