『らっ！』を探しだせ！！｜リアクション

『らっ！』を探しだせ！！

「なんなんだ、これは」
　公園についたタイラ・トラントゥールは思わず眉間に皺が寄った。
　それもそのはず、いつもの公園がちょっとした異空間となっている。全く理解ができない。
　謎の集団がラーメンを食べている。不思議な雑貨達と共に。
「おい、どういうことだ」
　隣でラーメンに目を輝かせている源竜世を肘で小突く。
「あのな、地球のピンチだから頭に『ら』のつくアイテムを探せって言われて」
「はぁっ！？なんだそれはっ。それにボクはラから始まらないぞ」
「だから、ライバルってことでタイラを探してたんだ！」
　どーん！と胸を張る竜世。
「どうやって地球がたすかるかしんねーけど、最強って感じがしねえ？」
　その言葉にタイラは一瞬、思考する。
（確かにコイツはボクのライバルだが……だからといって最強など……）
　そっと頭を振った後、タイラはいつもの表情で竜世を見た。そして
「ライバル、はアイテムになるのか？意味が違うだろうが」
　竜世は一瞬、キョトンとした後
「ハッ……！たしかに！アイテムじゃねえな……。ら、らっぱ、とか？」
「……お前の背中にあるのは、何だ？」
　竜世の背中にあるもの、それは
「……ランドセル……！？ホントだ！オレ持ってんじゃん！いやー、タイラは天才だなー」
「まったく……」
　竜世から顔を背けるタイラ。竜世はてへへ、と笑んでいる。
（いつからだろう。いつの間にかその存在を認め、隣にいるのが当たり前になったのは）
　内心頼る事さえあるのを……タイラは自覚していた。
「そうだ！」
　タイラの思考を竜世の明るい声が引き戻す。
「アイテム、多い方がいいっぽいんだけど、タイラも何か持ってねえ？」
　ふむ、と考えた瞬間、先程洋菓子店で購入したお菓子のことを思い出したタイラ。
「そういえば、さっき買った菓子がある」
　タイラが手に持っていた紙袋からお菓子を取り出した。
　包みを開けば
「……クッキー？」
　竜世が首を傾げる。
「これはラング・ド・シャ…フランス語で猫の舌という意味のクッキーだ」
　今日のお茶のお供にしようとは考えていたが、あたりを見れば沢山の人々が『ら』のつくアイテムを持ち寄っているとなると、これも提供した方が良いのか、と思うタイラ。
　目の前の竜世と言えば、周りの状況より何よりも。タイラの手に持つクッキーに熱い眼差し。
「な、なんだその目は……」
　餌を前にした犬の様だ、と思う。
「……食べたければ、食べればいい」
「え？くれんの？やったー」
　途端にニパッと笑う竜世に内心呆れつつ、タイラは箱を差し出す。
「ほら、好きなだけ食べろ」
　タイラが箱を差し出すも、竜世は瞳を閉じ、大きく口を開けている。
（どういうことだ……！？）
　まさか、と思いつつタイラは箱を差し出したまま
「要らないのか？」
「ん？いるってば。だからほら、あーーん」
　受け入れ態勢の竜世に
「何でボクが……」
　そう言いつつも、クッキーを一枚竜世の口へと充てる。
「ん……！」
　パクリ、と唇で咥え、サクサクとクッキーを食べれば。
「うっっ、めーーー！！」
　更に輝きが増す竜世の琥珀色の瞳。
「おかわり！」
（まったくコイツは……）
　そう思いながらもう一枚投入しようとしたタイラだった、が
（いやちょっと待て、ならばやらなくても良かったのでは！？）
　そう思うタイラだった。
「後は自分で食べろ！」
「ちぇー」
　口を尖らせながらも、竜世はもう一枚クッキーをパクリ。
「それじゃあ、オレ達の『ら』も渡そうぜ！」
　竜世に手を引かれ、タイラは進むのだった。
「いやもう、手は離せっ」

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