寝子島でお金を稼ごう！｜リアクション

寝子島でお金を稼ごう！

☆デッサンモデル・ティオレ

（何かあるたびにネコジマへ飛ばされるようになって幾星霜……ってほどでもないが、ネコジマに来るたびに金がかかるな）
　冒険稼業というか盗賊が本業のティオレ・ユリウェイスだが、最近はスランプ気味だ。
（そろそろこの島で何かしら仕事でもしないとマズいんじゃないかねえ。いきなり飛ばされてた時に無一文だったら目も当てられないし）
　そんなことを思いながら都合何度目かの星の交易所にやってきた。
「おーティオレちゃん。ほしびと用の仕事あるよ、やってみない？」
　メイに声をかけられ、渡された仕事内容の書かれた紙をペラペラめくる。
「それじゃ、これにしよう」
　適当に選んだ仕事は……。
「へえ、ティオレちゃんにぴったりじゃない？　スタイルいいしー。年齢は……２０歳ぐらいにしておこうか。はい、木天蓼大学の地図」
　さっそくメイが手続きしてくれた。

（どんなものだかよく判らないが、ちょっと行ってみるか）
　ティオレは木天蓼大学へ行き、貰ってきた募集の紙を見せて中に入った。
　白髪で眼鏡の男性が現れた。部屋まで案内してくれると言う。
　大学の長い廊下やたくさんの扉を見ながら、ここにお宝はあるのかしら？　とつい考えてしまうティオレ。
「モデル……ってどんな仕事をするの？」
　雇い主らしきその男にティオレは尋ねた。
「芸術学部の美術専攻のデッサンモデルとして、お立ち台に立って適当にポーズをとって立ってもらう。それを見て学生が絵を描く」
「そんなことでいいの？　わかった」
「じっと動かずにいるのはなかなか大変だよ。休憩は入れるが……」
　だがティオレは盗賊だ。長い時間身を潜めていることだってあるし、そこまで難しいとは思えない。

　部屋に入ると、学生たちが待っていた。
　中央に台があるので、どうやらそこに立つのだろうと見当をつける。
　おもむろにティオレは服を脱ぎだした。
　学生たちがざわめく。
「あ、いや、服は……」
　雇い主が何か言いかけたが、ティオレは躊躇せず服を脱ぎ続け下着に手をかけた。
　均整のとれた引き締まった肢体に豊かな胸が惜しげもなくさらされる。
　教室は騒然となったが、ティオレはそんなことには構わず堂々としている。
「……服は、ここに入れるといい」
　雇い主は言いかけた言葉を飲み込んで、服を入れる籠を持ってきてくれた。
「すごい……プロなのかしら」
「プロだよ、絶対」
　学生たちが囁きあう。
「あの、ポーズは右手を上げて真っ直ぐに伸ばして……左足は一歩前に」
「……ん、こうか？」
　学生の指示に従ってポーズを取り、そのまま彫像のようにじっと動かない。
　学生たちは興奮を創作意欲に変換すべく、必死に鉛筆を走らせた。
　
　学生たちの描いた絵にちらりと目を走らせたが、ティオレは表情を変えなかった。
（美術品として価値のあるものじゃなさそうね）
　仕事を終えると、雇い主が封筒を渡してくれた。
（立っているだけでこれだけもらえるのね）
　ティオレは満足して大学を後にした。

　

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