寝子島でお金を稼ごう！｜リアクション

寝子島でお金を稼ごう！

☆デッサンモデル・ミーツェ

（『ねこじま』のお金、『ねこじま』でも稼げるようになりたいですな）
　三毛猫ほしびとのミーツェ・Ｍ・フェリスは常々思っていた。
（でも、ミーツェは『ちゅーがくせい』は雇えないとか言われるのですな……）
　寝子島に来ると獣人のときよりずっと大きくなれるのだけど、それでもミーツェは12歳くらいにしか見えないのだ。
　アルバイトをするに当たり、メイにいろいろ教えてもらった。
（『りれきしょ』も色々聞きながら書いたですな！　『ちゅーがくせい』はだめかもなので『こうこうせい』にしましたなー！）
　なるべく大きく見えるよう、背筋を伸ばしてみたり。
　猫耳はミディアムショートの天然パーマに隠し、尻尾は服下に巻き隠して木天蓼大学へ行った。
「『猫座　みつえ』といいますな。今日はよろしくお願いしますなー！」
　先生の前で、寝子島用の偽名でご挨拶をした。
　先生は頷いて、人がたくさん集まっている部屋に案内してくれた。
「耳と尻尾は出してていいよ。そこに座って動かないでじっとしていてね」
「いいのですかなー」
　耳と尻尾を出してみたが、視線は感じるものの学生たちにぎょっとする様子はなかった。
（デッサンのモデルはじっとするバイトなのですなー）
　学生たちが、ミーツェのほうを見て手を動かし始める。
（……皆、紙にかりかりしてるのですな。時々こっちを見てくれるのですな）
　そこでようやくミーツェは気づく。
（……あれ、ミーツェが描かれてるのですな？）
　最初の１～２分はじっとしていられたが、時間が経つ内に……
（……うう、うずうずするですにゃ）
　星幽塔の自宅でごろにゃーんってしてる時は平気なのに、今はとっても動きたい。
（椅子に座ってじっとするのって、実は結構難しいのですな……）
「はい、休憩」
　先生が声をかけてくれて、ほっとしたものの。
（ごろにゃーんってしたらやっぱりだめですかな）
　理解ある先生だけど、学生の前で尻尾動かしたりしたら怪しまれると思うよー、とメイが言っていた。
　人目を忍んでそっと尻尾をぱたぱたさせる。　
　
　休憩のあとはまたじーっと動かずにモデルをする。
　そこへどこかの窓が開いていたのか、蝶が飛んできた。
（……あ、ちょうちょですな。じゃれたいですな。捕まえたいですなー…）
　我慢しなきゃ、と思うものの、猫獣人としての本能が……
　ちょいちょいっ。
　つい手を出してしまった。
「はい、動かないでねー」
　先生に言われ、欲求不満のまま手を引っ込める。

　また長く感じられる時間が過ぎて。
「はい、おしまい。おつかれさま」
「や、やっと終わったのですなー……モデルとは大変なお仕事なのですなー……」
　ついつぶやいたミーツェだが、学生の絵が目に入った。
（うにゃ？　これは……ミーツェなのですにゃ？）
　ポーズも服装も、ミーツェの絵であることを物語っている。
「とっても綺麗に描いてもらえてるのですな。嬉しいですなー！」
　嬉しくて猫耳と尻尾がぴょこぴょこ動いてしまい、慌てて手で押さえるミーツェだった。

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