魔界すごろく！｜リアクション

魔界すごろく！

◆みんなで遊ぼう魔界すごろく！　～６～

「何だろー、急に心を入れ替えたくなったわー」

　ゲームも後半戦に入っていた。陽太は突然襲ってきた後悔のような、焦燥感のようなそれにとぼとぼと天へと戻っ……ていくように見せかけて、居酒屋の中へと入って行った。しかし、頼むのは酒ではなくノンアルコールである。

「ノンアルコール美味しいでっす☆」

　きゃぴっと言う陽太の横で、征一郎はとうとう『１０』と書かれたマスに足を踏み入れる。するとその短髪は前髪をそのままに長く伸び、背は縮んでいった。なかなかの美人であるが、征一郎は全く嬉しくなさそうだ。

「くそ、やっぱり変わってやがる。またこの姿か！」

　神魂の影響による性転換には慣れているが、やはり見られるのはかなり恥ずかしい。特に、前にこの姿で会ったことのある春彦には、絶対に会いたくなかった。征一郎は次で上がれることを祈りながら、次のターンを待つ。

「あら、ぴったり」

　ころり、と出た目を見て、紅葉は素直にそう言った。軽やかな足取りでゴールのマスを踏むと、どこからかクラッカーが鳴り祝福される。紅葉は既にゴールしていた参加者に挨拶しつつ、後ろを振り返った。ループにハマっている参加者もいるようで、ゲームはまだまだ続きそうだ。

「のんびり待っていましょ」

「進んでは休み、進んでは休み……まるで普段のオレのようだわー」

　陽太はマスの上を行ったり来たり、時に止まりつつの状況に苦笑して、こう零した。

「とはいえこのままだとループは抜けられないねぃ」

　が、まだ先に続く道のりを見て顔を上げ、いつもの微笑を浮かべる。

「悪魔のままでゴールを目指すよぅ☆」

　一方で、征一郎は運良くループに引っかかることなくゴールすることに成功した。それによって身体も元に戻ったようで、安心したように息を吐く。そして、

「今度こそ高みの見物させてもらうぜ」

　と笑うと、彼のヴァイオリン、オリアスと戯れながら、他のメンバーの様子を見守り始めた。

「はい、到着☆」
「あら、陽太ちゃんもゴール？」
「おー、一緒にあがれたみたいだねぃ」

　その次のターン、陽太と恩は揃ってゴールを踏んだ。二人で笑い合いつつ、陽太は後ろを振り返って、今までのことに想いを馳せる。

「いやはや、なかなか面白いコマだらけのすごろくだったわー」

　終わってしまえば、なんだかんだいい思い出になるものだ。残った三人のうち、七瀬はマイペースながらも順調に進んでいる様子で、次のターンには、

「ふう、やっと到着です」

　と言いつつ、二人に遅れてゴールした。

「みんながゴールしたら、このすごろくも終わりなんですよね」
「そうなるな」
「ちょっと物足りない気分になりますね」

　そう言う七瀬は無表情ではあるが、なんとなくしょんぼりしたような雰囲気である。残る参加者はあと二人、春彦とロベルトだが……。

「うげっ、またココかよ……」
「ゴール出来なかったらどうしよう……」

　進んでは戻り、進んでは戻り、時に一回休みのループに引っかかっていて、先は長そうだ。春彦はぐぬぬとゴールで待つ陽太を睨みつけ、

「天罰じゃなくてあいつの呪いじゃなぁーのか！？」

　と叫ぶと、ぐっと拳を握る。

「呉井の野郎、覚えてろよっ！！！」

　一方でロベルトはというと、ゴール出来ないまま、元の世界に戻れないままではないかという恐怖に襲われ、心細そうだった。

「や、ヤダー！　美少年ハーレムを築けないまま死ぬのはヤダー！」

　悲鳴のような声を上げつつ、ロベルトはサイコロを振る。

「……あ」

　途端流れは変わり、幸運にもループから抜け出ることに成功した二人は、ふうふう言いつつゴールのマスを踏むと、ロベルトは喜びに跳ね、春彦は脱力して肩を落とした。

「やったー！　よ、良かったー！」
「やっと付いたぜ……」

　そうして二人がゴールした途端、クラッカーが盛大に鳴り出し、くす玉がパカーンと割れる。
『魔界すごろくおしまい。お疲れ様でした！』
　現れたメッセージに参加者が驚いていると、あたりは眩い光に包まれた。

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