魔界すごろく！｜リアクション

魔界すごろく！

◆みんなで遊ぼう魔界すごろく！　～５～

「なんかね、堕落の味がした」
「どんな味だ」
「詩的なことも言うのね、ロベルト君」

　居酒屋から出てきたロベルトは開口一番こう言って、征一郎に呆れられていた。しかし征一郎のツンツンした態度には慣れっこのロベルトは、それに対して気分を害することもなく、身体に残った酒のお陰でふわふわと機嫌よく進んでいく。

「お、女の子になっちゃった！？」

　が、『１０』のマスに止まった途端、彼の身体は変化して女性のものになってしまった。大きな胸がシャツの下で苦しそうに膨らんでいる。恩も七瀬も同じマスに止まったようで、二人とも変化した身体を楽しんでいた。

「あらやだ、わたしも女の子よ、やったわね」
「みなさん可愛らしかー」

　七瀬はぽわぽわと性転換した皆を見ていたが、自分の身体に起こった異変に気付くと、

「……あ、僕もいつの間にか女の子の姿になっとる」

　と呟き、春彦の方を向いた。

（やっぱり春彦がおったら面白いことがおきますねえ）

　この前のことだって春彦にとっては災難でも、七瀬にとっては楽しい思い出だ。七瀬は春彦のことをキラキラした目でじーっと見つめたが、向こうに逸らされてしまったので残念そうに俯く。

「それにしてもこのマスいろんな人が止まってますね」
「自分は止まりたくねぇな」

　征一郎ははっと鼻で笑って、女体化への恐怖を誤魔化した。それがフラグだと気付いたのは、何巡か後のことである。

「ちきしょー進まずに戻ってんじゃねぇかよ！！」

　七瀬の視線から逃げた春彦は、『１４』のマスを踏んでしまい、『８』に戻されてしまった。悔しさと同時に、ループにハマってしまうのではないかという考えが浮かび上がってくる。春彦は頭を振って弱気を吹き飛ばし、次のターンに賭けた。

　散々な目に遭っている男性陣の横で、紅葉は順調に進んでいた。春の天使のようだった外見は、セクシーなものへ変化し、コツコツとピンヒールの音を響かせている。
　しかし――誰よりも舞台の上で輝きたい。苦労せずに美しくありたい。少しのレッスンでもっとうまく踊りたい。自分の内に少なからずある負の感情が、魔界に近付くにつれ、悪魔に変化するにつれむくむくと湧き起こることにも気付いていた。

「あらあら」

　この感情はすごろくのせいではなく、彼女の心の奥底に堅く隠されていたものでもある。紅葉はそれに戸惑ったが――

（これも私なのよね）

　と、受け止めることに決めた。ゴールはもう、目の前だ。

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