魔界すごろく！｜リアクション

魔界すごろく！

「……ヒュー、女の子になっちゃったの？」
「そうみたいだ」

　女性、それもかなりの美人になった恋人に少々嫉妬しつつ、水樹は酒をあおる。

（……水樹はあんなに酒飲めたかな？）

　ヒューの心配をよそに、水樹は行きつ戻りつ、それでかなりの量の酒を飲んでいる。すっかり悪魔と化してゴールで待つヒューも、これにはかなりハラハラさせられた。
　二人がマスの上で迷いに迷っているうちに、修は神酒のことを考えたり、天界でまだ学ぶことがあるか確認していったり、根本的には同種だからと強がってみたり、読書をして天界知識を総確認してみたり、怪しげなドリンクを飲んでみたりと、様々なイベントを経験し、確実に堕天に向けて一歩一歩進んでいった。
　そうして、水樹よりも先に『ゴール』を踏んだ。

「ヒューさんもゴールしていたのか」
「お疲れ様、八神くん。楽しかったかい？」
「お疲れ様です。とても楽しかったです」

　ヒューと魔界の話をしてから、修は全員がゴールするまでにと、魔界を探訪した。

（悪魔の道も精進が必要なのだ）

　と、そうしみじみ考えながら。

　修の他にも何人かがゴールして、ヒューはますます水樹のことが心配になってきた。明らかに足がふらついているし、呂律も回っていない。助けに行きたい気もするが、こればかりはどうしようもない。ただただ応援するしかなかった。やがて、水樹は『１０』のマスに足を踏み入れる。すると水樹の身長はぐんぐん伸びていき、髪は短くさっぱりとしだした。体格もがっしりとして、爪先から天辺まで男になった水樹は、ゴールで待つ、こちらも性転換した恋人をちらりと見て、

「えへへ」

　と笑う。はっきり言ってしまうと、今のヒューは好みのタイプだった。アヤしい雰囲気を身に纏いつつ、水樹はサイコロを振る。出た目は……！

「……６！」

　スキップしながら、彼女（彼？）は恋人の胸の中へ飛び込んだ。

「水樹、ようこそ魔界へ」

　ヒューの声を聴きながら、水樹は光に包まれ――そのまま気を失った。

　目覚めた二人が目にしたのは、ヒューのアパートの天井だった。いつの間にか元の世界に戻されていたらしい。身体を確認してみると、ヒューの豊かな胸は平らに、水樹の短かった髪は長く伸びている。すごろくの世界から戻った際に、性転換した身体も元に戻ったようだった。

「なんだかとてもお腹が……」

　沈黙を破ったのはヒューの声だ。ヒューは水樹に、

「二人でどこかへ食べに行こうか」

　と笑いかける。水樹は笑顔で頷くが、ハッとして、

「……お酒はいらない」

　と返した。

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