Let's Play！｜リアクション

Let's Play！

【ぜっきょうしてください。（１）】

　さて、強制ゲームオーバーをくらった五郎八は最初からゲームをやり直すことになった。
「……ていうか、絶対に時間内にクリア無理よね。だって、日光写真だけで一時間かかるし」
「あ、でも、水につけると５分で済むって、攻略サイトに書いてあった気がする」
　すでにクリア直前まで達していたまゆらが、ハタと思い出したように五郎八に助言する。
「……え、そうなの？　なら、何とかなるかも……」
「うん。あたしも応援するから、頑張ろ☆　よし、クリア！！」
　かくして、まゆらは一人目のゲームクリア者となり、五郎八は正攻法による超速クリアに挑戦することになる。
　一方、蒼も、猫魔村の２周目のラスボスの撃破直前まで辿りついていた。
「……さすがにミスするたびにビリビリはキツいよね……んっ……」
　と、そのときパッドからまたビリビリと電流が流れ、蒼は喉から声を漏らす。
　その声が少しばかりセクシーで、一部の視聴者が画面の向こうで思わず息を飲んでいたりもしたのだが、それはまた別のお話。
「……これで、最後！」
　と、次の瞬間、蒼の操るキャラがとどめのダガーを投じる。
「よし、クリア！」
　そして見事にボスを捉えたそのラストショットによって、晴れて蒼が二人目のゲームクリア者となった。
　配信動画には、彼女の見事なプレイを称える拍手コメントが飛びかっている。
　その頃、流もまたラスボスとの戦いに突入しようとしていた。
「さあ、数々の難所を越えて、ようやくやってきましたラスボス戦！　普通なら、攻撃力が高いニャルフに切り替えて戦うところですが――あえて、ここはニャルカードで行きます！」
　それに視聴者が『お？』『アホか』『いいぞ』『流石です、課長！』とコメントを寄せる。
　ラスボスの吸血鬼の猛攻をコウモリ変化で耐えしのぎつつ、流はその視聴者達の声援に背中を押されるようにして、少しずつ、だが確実に敵のライフを削っていく。
「よし、この一撃で！」
　そして、次の瞬間、ニャルカードのショットがラスボスを撃破する！
「やりました！　そして、流れる感動のＥＤ。いやー、じつはこのカセットにはコニャーミが開発した特殊なチップが組み込まれていて、それがこのハイクオリティなグラフィックとＢＧＭを実現しているんですな。いやー、やっぱり当時のコニャーミは凄い！」
　と、クリアしてなお流の熱いトークは続いたが、それはカットされたとかされなかったとか。
　そうして、他の面々がクリアをしていくなかで、最初から再スタートしていた五郎八もまた淡々と最短ルートを選択し、すでに最終面まで辿りついていた。
「……水につければ５分で済むなんてね。まだまだ私の知らない裏技がたくさんあるのかもね」
　これは今や『世界の何某』なんて呼ばれる大物芸能人がプロデュースしたゲームだが、やはり天才の考えることはわからないと思う。
「頑張れ、５６８ちゃん。あたしはＦ－ＮＥＣＯしながら応援してるよ……て、にゃああ！？　また大破した！？」
　その隣では、まゆらがキャーキャー叫びながらＦ－ＮＥＣＯにも挑戦していた。
　おそらく五郎八がゲームをクリアするのも時間の問題だろう。
　そして、今、最大の佳境を迎えているのが、パソコン部の面々が４人で協力プレイしているＤＢＤだった。
「……あっ、死んだ……」
　柚枝を助けるために囮役をしていた奈津樹のキャラが、ついに殺人鬼に殺されてしまったのである。
「ふ、ふふ。文月さんの死は無駄にはせぇへんで……！　よし、修理終わったで！」
　と、そこで真がついに最後の発電機の修理を終える。
「eggさん、Ｐ先輩、はよ脱出ゲートに逃げや……って、うわ、ミゲルのやつもう来よった……！」
「いなりん、ダイジョブ！？」
「ええから、eggさんとP先輩は早逃げ！　こう見えても、追いかけっこは得意なんよ！」
　心配するスグリをよそに、真は颯爽と囮役を買って出て、二人が逃げる時間を稼ぐ。
「うわー！　もうだめだー！　ガチストーカー、まじで怖いよー！」
　と、柚枝はもはや先輩としてのプライドなど全力で投げ捨てて、絶叫する。
「ギョェ～！　確かにコワイ！　でも、Ｐ先輩、ガンバロウ！　みんなで一緒にクリアするんデショ！？」
　スグリのその呼びかけに、柚枝もはっと我に返ったように目を見開く。
「……そ、そうだよな。皆で一緒にクリアしなきゃだよな……！」
　柚枝が視線を送れば、すでに自キャラが死んだ奈津樹も、すでにゲームをクリアーしたほかのプレイヤー達も力強く頷いてくれる。
　気がつけば、配信終了まであと１０分を切っていた。

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