スイカ割り大会開催！｜リアクション

スイカ割り大会開催！

深縹露草は寝子ヶ浜海岸にはためく登りを見て、足を止めた。
「スイカ割り大会？　宝探し？」
　たまたま通りかかった龍目豪もその後ろで立ち止まる。
「浜辺でスイカ割り？　宝？」
　お互いがお互いの声に気づき、思わず顔を見合わせる。
「なにやらイベントみたいですね」
「こんなのやってるんだな」
　六月、夏も近い。海開きまではもう少しあるが、浜辺でのイベントなら、
「なんと言っても水着だよな♪」
「水着？　そういうものですか？」
「おう。見たいだろ？」
　露草は少し考えて、豪の全身を上から下まで観察した。
「いえ、特には……」
「いや、俺の水着じゃないからな？」
　露草は目を見開いた。
「ならスイカの水着を見たい、と？　意味不明デース！」
「なんでそうなるんだよ。女子だ、女子。ていうかデースってなんだ？」
　思わず素がでてしまい、露草はこほんと咳払い。
「ああ、そういうことですか」
「何、意外、みたいな顔してるんだよ。当然だろ？　……まあ、いいか。じゃあ、俺は先に行くからな」
豪はやる気持ちを押さえつつ、砂浜に降りて受付を済ませるのだった。
（見たくても女子の水着を眺めるのははばかられるが、目隠ししてる女子の視線が気にならないのはいいよな）
「よし」
　気合十分、拳を握りしめた豪は何かを踏んだような気がして、砂浜を見やる。
「あれ、なんだこの帽子？　スイカ模様……か？　面白いな」
豪は試しに被ってみることにした。
「お、ぴったりじゃ」
　次の瞬間、足元が崩れ、
「のあ！？」
　気付けば首まで埋まっていた。
「なんだ、これ……」
　辺りを見回してみると、浜辺に転がる無数のスイカと目線が同じになっていた。

　豪の背中を見送った露草は少し考えて、
「水着はともかく、百円でできるスイカ割り……やらない手はありまセーン！」
　海岸へとダッシュした。
　砂浜に降り、すぐに受付を済ませる。
「お兄さん、スイカ割りセット、レンタルやってるよ！」
　麦わら帽子のおじさんに進められ、露草は棒と目隠しを借りることにした。

　
寝子ヶ浜海岸にはためくスイカ割り大会ののぼりを見つけた羽生碧南は、なんとなく、参加することにした。前に砂浜へ下りて行った男子達の会話を聞いていたというのもあるが。
「あなた、少しいい？」
砂浜に下りようとして、声をかけられ振り返ると、サーフボードを持った女性が立っていた。三折部朝衣だ。サーフィンをする目的で寝子ヶ浜海岸にやって来た彼女はスイカ割り大会開催を知らせるのぼりを見つけたのだ。
快晴で真夏日の今日、サーフィンをしにここへやってきたのだが。
「これってなんのイベント？　スイカ割り？」
「スイカ割り大会で宝探しみたいですよ」
　朝衣は少し考えて、
「あなたも参加するの？」
「なんとなく、しようかなーと思ってます。先に行きますね」
　碧南は軽く会釈をして、砂浜へ下りた。
「ちょっとわくわくする。こういうのはまずは形からよね」
　受付を済ませた後、開店していた海の家で水着とTシャツを一枚借りた。
　砂浜に戻ってくると、受付のおじさんが手を振ってる。
「お嬢ちゃん、気合い入ってるねー」
「やるからには全力を尽くしたいので」
　碧南はＴシャツの裾を縛って、目隠し用の布を装着。
「おじさん、スイカ割りの棒を貸して下さい！」
「はいよ」
　手渡されたそれはずっしりと重く、手応え充分だった。
　その瞬間、碧南のまとう空気が張りつめる。
「集中」
　小さく、そう呟いた。

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