スイカ割り大会開催！｜リアクション

スイカ割り大会開催！

(スイカ割りって何年ぶりかな……)
先に下りて行った碧南の背中を見送りながらなんとなくそう思い、朝衣はさっそく参加申し込みをすることにした。
「あ、ボード、どこかに置いておかないと」
「あそこの壁に立て掛けて置けば大丈夫だよ」
　受付のおじさんに従い、サーフボードを海の家へと運んで行く。許可をもらったので、そこへ預け、いよいよスイカ割りだ。
「さてと」
　着ていたパーカーとＴシャツを脱ぎ、トップスは黒いビキニ、ボトムはデニムのホットパンツというスタイルになる。
「おー、こっちのお嬢さんも気合い充分だねぇ。皆若いねぇ」
「お宝が入ってるスイカ……、探すためのヒントとかあるんですか？」
「それは答えられないなー。割って割って割りまくり、勘を働かせれば見つけられるはずだよ。スイカより一回り小さくて、丸いものだから」
「丸いもの」
　それがなんなのかわからないが、大きさ的にスイカを割ればすぐにわかりそうだ。
「とにかく割ってみないと」
　朝衣は一人、頷いたのだが。
「あれ、何あれ？」
　テーブルが置かれ、そこに露草が何やら作業をしているのだ。

数分前。
露草は近くにあったスタンダードな大きさのスイカの前に立つ。
「お、気合十分だねえ」
　おじさんの声援を耳に頭の後ろで目隠し用の布をぎゅっと結ぶ。
（……剣道はあんまりした事ないのですよね）
「そういえばスイカも、幼い頃に割ったくらいで……まぁ、変に考えすぎるより、割って楽しむのが一番！」
露草は先ほど見て覚えたスイカの方向目掛けて棒を振り上げた。
「は！」
　掛け声と共に勢いをつけて振り下ろす。パコンという間抜けな音がした。手ごたえありだ。
「上手く割れたでしょうか？」
　ゆっくりと目隠しを外すと、
「なんデースか、これー」
　目の前にあったスイカは真っ二つに割れてはいたのだが、中から白い紙が出てきていた。
『ハズレ』と書かれている。
「一体どうやったらこんなことができるんデースかー？」
　それはそれとして、スイカ自体は食べ頃のようだ。赤い実が熟れている。
と、すぐそこにテーブルが用意されていることに気づく。
「そのテーブルに置かれているのは包丁、スプーン、まな板、ソーダ水、ミニ冷蔵庫にミキサーなど」
「おお！　まさに今欲しかったものデース！」
おじさんのほうを見やると親指を立てて何度か頷いた。使って良いらしい。
「それでは遠慮なく」
　割れたスイカをテーブルに運んで六分の一を冷蔵庫へ、他は砂のついた部分などを切り落としてまずはそのまま
「んー！」
　少しの青臭さと甘い香り、溢れんばかりの果汁が一気に喉の奥へ流れ込む。これぞ夏の味だ。
「ふむ、甘くてしゃりしゃり……！」
　タネは用意されていたバケツへ。次に露草は冷蔵庫内の甘いソーダ水を取り出した。
「それ、何をするの？」
　露草が顔を上げると、黒ビキニとホットパンツ姿の朝衣が首を傾げていた。
「フルーツポンチ風スイカソーダですよ」
露草は手際よく中身をスプーンでくり抜き、残った皮にソーダ水を流し込む。くり抜いたスイカを浮かべればスイカだけのフルーツポンチの完成だ。
「へえ、見た目が涼しそうね」
「味見してみますか？」
　露草が透明な深皿に取り分ける。
スプーンですくって、お互いに口へ運ぶと、
「おー甘いデース！」
　スイカと甘みのあるソーダ水の相乗効果で、非常に甘めだ。
　露草が同意を求めようと朝衣を見ると、
「一つ提案があるんだけど、試してみない？」
　朝衣は露草に笑顔を向けた。

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