電池切れとの付き合い方｜リアクション

電池切れとの付き合い方

●タイムリミット

　城山水樹は木天蓼大学の学生として学業に励みつつ、『STeLLA GIRLS』の専属モデルやコスメブランド『Sonora』のイメージガールという仕事をこなすという、とにかく忙しい日々を過ごしていた。
　そんな彼女が今いるのは木天蓼大学の図書館。机にタブレットを置いてなにか作業をしている。じつはあと1時間ほどでゼミが始まるのだが、彼女はまだそこで発表するレポートをまとめ終えていなかった。

『仕事が忙しくて間に合いませんでした』

　そんな言い訳は所属するゼミの教授には通用しないと分かっていた。だからこそ、いま残されたわずかな時間を使ってレポートを進めている。水樹は一心不乱に資料を見ながらレポートを書いていく。そしてゼミ開始まであと30分を切ったところで、なんとかまとめ終えた。

（これで今日はなんとか乗り切れるわ）

　そう思ってデータを保存しようとしたとき、ふとバッテリー残量が目に入った。
　そこには残り3パーセントと表示されていた。

（え、嘘でしょ？　ちゃんと充電したはずよ！）

　思わず青ざめる水樹。もしタブレットの電池が完全に切れたら、今しがた書き上げたレポートをゼミで発表することができない。

『書いたけれどタブレットのバッテリーが切れてしまいました』

　そんな言い訳もやはりゼミの教授には通用しないだろう。
　水樹は急いでタブレットや本、ルーズリーフなどレポートをまとめるために広げていたものをバッグに詰め込むと大急ぎで所属する研究室へ向かう。

（もうゼミ室で充電するしかない……！）

　焦る気持ちを抑えつつ、研究室の前へとやってくるとドアを開けた。そこには早めに来ている同じゼミの子たちが数人いるだけで、まだ教授は来ていなかった。挨拶もそこそこに充電しようとコンセントへ近づきながら、バッグのなかを確かめる。

（……アダブタがない！　自宅に置き忘れた……！）

「あぁもうついてない！」

　踏んだり蹴ったりな状況に思わず叫んでしまった。その声にゼミ生たちが一斉に振り向く。

「どうしたの、水樹？」

　少し不穏な空気が流れるなか、水樹はそう問いかけられた。事情を説明すると、そのゼミ生がアダプタを貸してくれた。同じ機種だったので問題なく使えそうだが、充電は間に合いそうにない。仕方ないのでそれを繋いだまま発表会に臨み、なんとか窮地を乗り切った。
　なお、水樹のレポートはまあまあの評価を受けた。

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