電池切れとの付き合い方｜リアクション

電池切れとの付き合い方

●セーブはこまめに

　ここは寝子島中学校。
　チャイムが昼休みの訪れを知らせると、生徒たちは持ってきた弁当を広げたり、購買室へ向かっていく。そんななか仙藤蒼はサンドイッチとコーヒー牛乳で軽く昼食を済ませると、屋上へ向かった。誰も居ないのを確認すると、こっそり隠し持っていた携帯ゲーム機で遊び始めた。

　彼女は根っからの少女ゲーマー。
　学校では携帯ゲーム機、放課後はゲームセンターかゲームショップへ寄り道と、来年には高校受験があるのに、のんきにゲーム三昧である。もっとも、これほどゲーム三昧にも関わらず、蒼は地頭がいいので成績は意外にいいほうだったりする。

　そんな彼女は慣れた様子でゲーム機を操作すると、前回セーブしておいたデータを読み込んだ。
　フィールドが表示されると、そこに大型剣を構えた少女剣士が現れる。蒼はそのキャラクターでフィールドを縦横無尽に駆け巡り、敵をその剣でばっさばっさ切り倒していく。敵に囲まれたら雷魔法などを使って派手に吹き飛ばす。攻略のテンポを落とさずにどんどん先へと進む。
　だんだん調子が出てきたので、このままボスのところへ乗り込んじゃえとばかりにフィールドを駆ける。
　その最中に『そいつ』がやってきた。

「あれ……なんか画面が変？　……っていうか電池切れ寸前って！　ちょっと待ってよ！」

　ゲーム機の画面が少し暗くなったかと思うと、電源ランプが点滅し始める。夢中で操作していたから電池のことなど気にも留めていなかった。
　蒼は思わず動揺してしまう。いきなりの事態に少しパニックになり、少女剣士は操作ミスであっという間に敵の集中攻撃に見舞われてやられてしまった、
　さらに悪いことは続くもので、その瞬間に電池が切れてしまった。ここまでノンストップで進んできたから、途中で新しいセーブポイントを作っていない。それはつまり、この時間に進んだ分が丸ごと振り出しに戻るということ。

「はぁ……」

　蒼は深いため息をついた。あまりのことに思わず泣きたくなってきた。
　実際に泣くわけではないが、それほどにショックが大きかった。今日は一日どんよりした気分で過ごすことになりそうだ。

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