電池切れとの付き合い方｜リアクション

電池切れとの付き合い方

●思い出

「うな……【簡易端末】が調子おかしいですな？　何か表示が薄いというか……？」

　ミーツェ・Ｍ・フェリスは【簡易端末】を色々操作してみるが、表示が薄い状態は改善しない。
　それどころか、さらに薄くなっていくように感じられる。

「もしかして……寿命、ですな？」
「【簡易端末】が動かなくなって、その中にいる【A.I.C.O】さんとも会えなくなって……ノエルとも、お別れですな……？」

　このとき、ミーツェのなかで『ねこざ　ノエル』と出会った時のことが蘇った。
　寝子島へ遊びに来たときに、カプセルギアのことを聞きつけて善場義春が店主を務める模型店へ。
　そこでガチャガチャをまわして出てきたのは茶白の猫。全体がふわふわな毛に包まれた可愛らしいカプセルギア。
　【A.I.C.O】のカメラ機能で撮影して登録した後、このギアの名前を求められた。
　しばらく考え、そしてふっと頭に浮かんだその名前。遠い昔の記憶に居る、ある女性の名前。
　その名前から取って、ギアを『ねこざ　ノエル』と呼ぶことにした。　

「もっともっと、一緒に楽しみたいですなのにお別れなのですな……？」

　悲しみが体の内側から広がっていくのを感じる。これまでの思い出。これから増えていく思い出。
　そういった全てが無くなってしまうのか。どうしようもないのだろうか。

「ギアや【A.I.C.O】さんとお別れなんて、そんなのいやですなー！」

　ミーツェはぼろぼろと涙をこぼしながら泣いた。このまま終わらせたくない。

「【簡易端末】を助ける方法を探すのですな。玩具屋さんならなんかわかるかもしれないですなー！」

　そう思い立つと、急いで善場模型店へと向かった。
　到着してすぐに店主の善場さんに事情を説明する。善場さんは泣いているミーツェを心配しつつ【簡易端末】を受け取ると、その状態を調べる。

　ミーツェは、このときはじめて電池の概念を知った。

このページにイラストを設定する