【星幽塔】第十一階層　黄金の林檎を巡る物語｜リアクション

【星幽塔】第十一階層　黄金の林檎を巡る物語

「お前らも参加するのか？　じゃあ、ライバルだな！」
　と、金の髪を揺らし宣言するルーク・ポーラスターに、メリィはぴん、と虎のしっぽを立てて胸を張る。
「ライバル、だぞ！　あたしはルークにも負けないぞぉ～！」
「わっ、私だって～！」
　リリエルもぎゅっ、と両手を握ってやる気をアピール。
　そんな参加者たちの様子を見、ジェリコはうんうん、と頷いた。
「ん～、皆やる気まんまんっしょ？　時間もいい感じだし、そろそろスタートの準備してね～」
　彼の言葉に、参加者たちは最後の準備に取り掛かった。

＊＊　＊　＊　＊

（こういう時は、準備体操を念入りに……）
　真剣な顔で体をほぐすべく体操に勤しむティオレ。もくもくと体を動かしていく姿はまさにアスリートである。そして雪山に登る最低限の装備を整えた。
　考えることはフォルカも同じらしく、体操を念入りにした後装備の点検を入念に行っていた。
「今回はよろしくね」
　夏朝が呼びかけたのは、騎士の光で呼んだ桃白の毛並みがかわいいにゃんこ（ただし馬よりちょっと小さめサイズ。足先が白くて靴下みたい）。彼女は猫の背の蔵を正すと懐からねこさんシールを取り出して枚数チェック。
（荷物にこれを貼っておこう。猫さんを軽くするのは最終手段だ）
　夏朝は真剣な顔で頷くと桃白猫の頭をなでながら作戦を練っていく。
　一方の灯とルークは、遊牧民の長からルールを詳しく聞き出し、頭に叩き込んでいた。やるからには、正々堂々と、ルールを守って参加したいものである。
　彼の傍ではリリエルとメリィが互いを応援しつつ準備体操に勤しんでいる。ともにやる気が漲っているようだ。
　その頃、真白もまたわくわくしながら準備に勤しんでいた。
（黄金のリンゴかぁ～。なんというか、こうファンタジーの代表格だよね！　賞品も出るって話だし、がんばってゲットするぞー！）
　と気合を入れたところで真白は周囲の雪原を見て考察する。
（雪道を走るんだし……、何か滑り止めになるようなのは欲しいよね。あ、そうだ！　魔星の力で靴に蔓を巻いたら滑り止めになるかな？）
　今回真白が準備したのは魔星の力。みずがめ座である彼女は今、植物を呼び出し、操ることができるのだ。
（大きく引っかかる部分が増えるような感じで……）
　呼び出した蔓草を靴にまけば程よく滑り止めの役割を果たしそうだ。少し足が窮屈になってしまうが、それは致し方ないだろう。
　他の参加者たちもそれぞれ準備が整う。と、ジェリコが声をかけた。
「そろそろスタートの時間っすよ～。スタートラインに並んで並んで～」
「いよいよね。ふふ、リンゴ、ゲットしちゃうわよ！」
　フォルカが尻尾を優雅に降って笑う。だが、誰もが優勝を狙っているのだ。油断大敵である。
「位置について、よーい……」
　遊牧民の長が高台から声を上げる。そして、勢いよく鐘が鳴らされ、レースは火ぶたを切って落とされた。

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