【星幽塔】第十一階層　黄金の林檎を巡る物語｜リアクション

【星幽塔】第十一階層　黄金の林檎を巡る物語

序：金色の甘露を求める者たちよ、雪深き道を行け！
　――星幽塔・第十一階層
　ダイヤモンドダスト輝く雪原の村に、たくさんの冒険者達が集まっている。その中には寝子島から訪れる者達もいたりするのだが……。
「ん？　どこだ、ここは……？　おぉ？！　しかもこの服……ゲームの武闘家っぽい胴衣服じゃねぇか？！」
　と、寝子島探索をしていた筈なのに突如雪原へと飛ばされた朝比奈灯はあたりをキョロキョロ。そして、いつの間にか変わった出で立ちに気付いてさらに驚いていた。
　試しに拳を虚空へふるえば、燃え上がる赤い炎に包まれる。魔火の光の力である。だが、初めての事に灯は困惑していた。
「ここは星幽塔。寝子島の住人の中にはたまーにここへ召喚される人もいるんだよ」
　そう言ったのは何度もここへ着ている白真白。その傍らにいたのは同じように何度も星幽塔に来ている寝子島の住人、恵御納夏朝だった。
「もしかして、君は初めてここに？　だったら簡単に色々レクチャーしておいたほうがいいかもね」
　と、夏朝と真白は頷き合い、初めての出来事にあたふたする後輩に（簡単にだが）星の力や階層について話しておく。
「ん、これはなんの集まり？」
　ひょっこりと現れたのは、野暮用があり十一階層へやってきたティオレ・ユリウェイス。彼女は集まった冒険者を含む若者たちを見、目を丸くする。と、ジェリコ・神威がにぱっ、と笑って手を上げる。
「ウェ～イ！　ティオレパイセンも参加するっしょ？」
いきなり問われ、「何の事？」と戸惑うティオレに、ふさふさ狐尻尾を揺らしたフォルカ・ヴィクスンがやれやれ、と肩を竦めた。
「それじゃ分からないって。ええと、今から金の林檎争奪戦があるんだよ。１００年に一度実る金色のリンゴを収穫して、この村に持っていけばいいんだって！　あぁ、でもリンゴは１つだし、奪い合うのもありってさ！　なんだか滾るねぇ！　優勝者には素敵なお宝がもたらされるらしいし。あんたもどうだい？」
　フォルカから説明を受け、暇つぶしになるな、と考えたティオレは僅かに口元を綻ばせる。周りにいる者達の眼差しが、わくわくさせるのかもしれない。
「金のリンゴ争奪戦ですか……」
　近くにいたリリエル・エーテライトが参加者たちのやる気に満ちた顔を見、「おーごんのりんご……おいしいのかなぁ」と傍らで呟いていたメリィ・ランページもまたリリエルを見、にっ、と笑いかける。考えていることはどうやら一緒のようだ。
「メリィちゃん、面白そうですし、どっちが先に黄金のリンゴをとれるか勝負しましょう！
えへへ、やるからには負けませんからねっ！」
「よーし！！　やるからには負けないぞ、リリエル！！　あたし、足には自信があるんだ！」
　きゃっきゃっ、とやる気を見せあうメリリリコンビ。その愛らしさにほっこりする他の参加者もいたとか、いないとか……。

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