いきなりグルメリポート！　甘味制覇できるかな｜リアクション

いきなりグルメリポート！　甘味制覇できるかな

◆がんばれ小学生！

「食レポっていうと確か小太りのおっちゃんが『味の肉球祭りにゃー！』とか言ったりするやつッスよね？」
『そんな感じですねー』
「そのくらい簡単ッス！」

　ゆかりの説明にぐっとこぶしを握り堂々と言い放つのは古尾桐子だ。桐子はフッフッフと笑い、
（これでウチもいちやく人気ミューチューバーでお金ガッポガッポのカプギアのあんなパーツやこんなパーツまでいっぱいゲットしちゃうッス！）
　と野望の翼を広げた。桐子はテーブルに並ぶスイーツを見て、どれを食べるか悩み始める。

「それじゃあ、どのお菓子からいってみるッスかねー？」

　ケーキ、タルト、プリン、クグロフ、甘い香りの中、それらを素通りして、桐子はその隅に見つけたコーヒーゼリーにぴんと反応する。

「お！　このコーヒーゼリーいただきッス！」

　彼女の好物、コーヒー牛乳に似た味を想像しながら、彼女はぷるぷるした黒色を掬った。

「まずは一口……」

　口に入れた途端、彼女の細い目がカッと見開かれる。彼女はスプーンを置くと、顔を顰めた。

「むむむ！　に、苦い！」

　そしてもう一口食べても変わらぬ苦さに音を上げる。なんとかなんとか食べ終えて、ぐったりとこうコメントした。モニターに映るゆかりは、その様子を眺めてくすくす笑っている。

「これはまさに大人のブラック味ッス！　ウチは甘いコーヒー牛乳味のほうが好きッス……」
『お子様にはまだまだ早かったようですねぇ！』
「す、すぐ食べられるようになるッス！」
『そうですねー。あー、ムースやプリンなら子供でも食べられるかもー……』
「そうなんスか！」

　ゆかりの誘導に桐子は気を取り直して、ムースとプリンを一つずつ取ってくる。どちらもガラスの器の中でぷるぷる揺れていた。先程のコーヒーゼリーと比べると、此方の方がよりコーヒー牛乳に近い。スプーンを通した感覚も滑らかだ。

「うん、こっちはなんか色がコーヒー牛乳っぽいからきっと安心ッス！」

　先にムースの方を、ぱくり。桐子は飛び上がるような勢いで叫んだ。

「……うまーい！　これっすこれ！　このコーヒー牛乳味！」

　幸せそうなほわほわの笑顔で、桐子は続ける。

「まさに絶品ッス！　この味なら何個でもいけそうッス！」

　そうしてムースを食べ終えると、はたと首を傾げた。

「ところでムースってプリンとどう違うんスかね？」
『さあ？』

　ゆかりの適当な返事に桐子はもやもやしつつも、プリンの方に手を伸ばしてもう一度スプーンを手に取った。

「ここはコーヒープリンも食べてみるッス！　こっちも色はコーヒー牛乳っぽいから期待がもてるッス！」

　ぱくり。桐子はまたしても飛び上がるような勢いで叫んだ。

「……うまーい！　これっすこれ！　このコーヒー牛乳味！」

　そして先程と全く同じ満足そうな笑顔でほわほわと食べ進める。

「まさに絶品ッス！　この味なら何個でもいけそうッス！」

　そして先程と全く同じペースで食べ終えた。桐子は脳内で食べたばかりのプリンとムースを比べてみて、溜息を吐く。

「しかし食べ比べてみたけどムースとプリンの違いよくわかんねッス！」
『ふふふ、違いがわかるようになる、それが大人への第一歩でッ……』

　モニターの中のゆかりは肩を震わせて笑いを堪えていたが、やがて耐えきれなかったようで画面に数分砂嵐が起こった。

『……失礼しました。ここに居る限りいくら食べても太らないんですし、食べ比べてみたらどうですかー？』
「なるほどッス！　こうなったらわかるまで食べ比べ続けるッス！」

　と言うと、桐子はまたテーブルからコーヒームースとプリンを取っていった。彼女の食レポはまだまだ続きそうだ。